本年度は昨年度までに遅延を生じている動物実験を遂行することを計画したが、予定した期間に実施することができなかった。このため、過去の実験結果を再評価し、基盤となる条件の整理を行った。 歯肉由来線維芽細胞および歯根膜由来線維芽細胞の採取・保存・細胞性状の評価について、歯肉由来細胞は十分な細胞数を繰り返し採取することができたが、歯根膜由来細胞については採取の再現性が低かった。採取法の改善として、培地中の抗菌薬の変更、組織分散に用いる酵素剤の変更、実体顕微鏡の導入、初代培養時の培地量の変更、を行なった。抗菌薬の変更、洗浄不要の酵素剤が効果的であったと考えられた。採取した歯根膜由来細胞の一部はP2、P3およびP4で凍結保存を行い、一部で繰り返し継代培養を行なった。歯根膜由来細胞は歯肉由来細胞と比較しての増殖速度が緩慢であった。 足場材料について、移植時の操作性についてはコラーゲンゲルが適していたが、歯周組織欠損のような小さな欠損に多くの細胞を留置するために重要と考えられる定量的な細胞播種の再現性を得ることが困難であった。一方、コラーゲンスポンジについては移植時の操作性に劣り、また、細胞播種時に担体外部への細胞拡散が起こりやすく、定量的な細胞播種についてはゲル同様の困難性を認めた。 動物実験モデルについて、10週齢SDラットの上顎第一臼歯近心の歯槽骨を含めた歯周組織を削除した歯周組織欠損モデルと、歯槽骨を温存し歯肉を削除した歯肉欠損モデルを作成した。上顎第一臼歯近心の歯肉欠損モデル4群(歯肉欠損のみ、歯肉欠損+担体移植、歯肉欠損+歯肉由来線維芽細胞播種担体移植、歯肉欠損+歯肉由来線維芽細胞移植(注入))の移植実験と組織学的観察の評価の見直しを行ない、上皮及び結合組織の治癒過程を評価し、担体の及ぼす影響が少ないことを確認した。
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