研究課題
本年度は、昨年度までに蓄積した被験者の歯面・舌面より採取した口腔プラークバイオフィルム試料中の硝酸還元活性菌のデータ解析について、個々のプラークの硝酸還元活性、硝酸還元活性を持つ菌の割合や菌種などの様々なデータを複合的に統計解析し、学会発表等を行った。具体的な結果としては、硝酸還元活性菌の割合については個人差がかなり大きいことに加え、菌種については、口腔に常在しやすいVeillonella属などの複数菌種が、その大勢を占めることが明らかとなった。また、被験者より採取したプラークからの亜硝酸産生量が、プラーク中の硝酸還元菌の割合と相関傾向を示すこと、さらには、歯面上のプラークからの亜硝酸産生量が多いことなどが示された。これらの結果は、どのような人の口腔内においても、硝酸還元細菌による亜硝酸産生が、特に歯面プラークを構成する細菌によって行われているが、その産生量は個人間で大きく異なり、その一因として、細菌叢の構成の違いが考えられることを示唆した。また、検出菌種の一つであるVeillonella属を用いた基礎実験を進め、培養条件や代謝環境条件の違いにより、硝酸還元活性が変動することが示唆されたほか、産生される亜硝酸がVeillonella属や他細菌に及ぼす影響についても明らかにすることができた。これらの知見は、口腔内の亜硝酸産生活性の評価は、細菌構成に加え、個々の口腔環境なども含めて総合的に評価する必要があることを示唆している。
3: やや遅れている
測定機器の一部に不調が生じ、予定していた代謝実験に着手できなかった。当該実験については、次年度に繰り越して実施することとしたため、この区分とした。次年度のできるだけ早い時期に取り組む予定である。
測定機器の不調,新型コロナウイルスの影響による年度末の実験計画の見直しなど、諸般の事情が重なったことにより、個別細菌種の標準株を培養したものを用いた代謝実験の一部について、予定通り実施できていない。そのため、次年度の早い段階で、それらの実験を優先して行い、これまでに実施してきた菌種の硝酸代謝に関するデータなどと合わせ、さらに深い解析・追及を行う予定としている。また、得られたデータまたは解析結果によっては、追加実験を取り急ぎ検討し、進めていく予定としている。研究成果に関する議論のために、昨年度末に参加を予定していた国際学会が中止となったため、代替として歯科基礎医学会などの他学会へ参加・成果発表を行うなどを検討したい。また、海外学術誌への論文投稿も行うべく、引き続き準備を進めていきたいと考えている。
機器の不調等により、実験の一部が先送りとなり、それに必要な費用が残額として残ったこと、また新型コロナウイルスの影響により年度末に予定されていた成果発表(国際学会)が急遽中止となったため、その分の費用が残額として計上された。これらは、先送りした実験の経費および成果発表費用として次年度に使用予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 13件、 招待講演 4件)
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