研究課題/領域番号 |
17K12005
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
横山 三紀 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (70191533)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | lysosome / LAMP-2 / 複合体形成 / 光架橋 |
研究実績の概要 |
リソソームは加水分解酵素を含むオルガネラであり、細胞内での分解反応に中心的な役割を果たす。Lysosome-associated membrane protein-1/2 (LAMP-1/2)はリソソーム膜に豊富に存在するI型膜貫通タンパク質であり、高度に糖鎖付加されている。LAMP-1, LAMP-2は遺伝子の発現調節・機能において多くの違いがあり、LAMP-2欠損マウスは、LAMP-1欠損マウスより重篤な表現系を示す。またLAMP-2はダノン病の責任遺伝子である。しかしLAMP-1とLAMP-2は共通した構造上の特徴を示し、タンパク質の大部分は内腔側に存在し相同な二つのbeta-prism構造を持ち(内腔側ドメイン)、それに膜貫通領域と短い細胞質領域がつながっている。本研究に先立ち私たちは、LAMP-1とLAMP-2では複合体の形成様式に差があることを報告している [BBRC 479:489-495 (2016)] 。本研究課題では部位特異的な光架橋反応を利用してLAMP-2同士の複合体の形成様式を解析し、LAMP-1同士の複合体形成の場合と比較した。その結果二つの複合体形成では、架橋が観察される部位に差があることがわかった。予想外なことに、LAMP-2の場合にはLAMP-1には見られない特殊な架橋が形成されることも見出された。また複合体はLAMP-2タンパク質が生合成されてからリソソームに運ばれるまでのどの段階で形成されるのかを調べるために、光照射によりLAMP-2に架橋を形成させた細胞の細胞分画を行なった。さらに解析結果に基づく変異によりLAMP-2同士の複合体の形成を抑制できる可能性が示唆された。またLAMP-2の複合体形成の機能評価を行う目的でLAMP-2欠損細胞を作成し、LAMP-2欠損によるオートファジーへの影響を解析した。これらの結果はLAMP-2の複合体形成の構造基盤に関する初めての知見であり、LAMP-2の機能改変を介してリソソームによる細胞内分解を標的とした新たな創薬に貢献すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LAMP-1/2の内腔側ドメインはいずれも膜に近いC-ドメイン (C末端に近い)と膜から遠いN-ドメイン(N末端に近い)から形成されている。C-ドメインとN-ドメインはいずれも相同なbeta-prism構造を持ちリンカーで連結されている。内腔側ドメインだけを膜貫通ドメインから切り離したタンパク質は水溶液中では複合体を形成しない(ゲル濾過カラムクロマトグラフィーの結果から)という知見を共同研究者から得たので、今までに文献で報告されてきたLAMP-1/2の複合体はタンパク質同士の直接相互作用に加えて膜の上に存在する、という状況に依存して形成されると考えられた。このようなLAMP-1/2の複合体形成の解明には拡張遺伝暗号を用いた部位特異的架橋の導入がきわめて有効な手段と考えられる。LAMP-1/2の完全長のC-ドメイン, N-ドメイン(およびN-ドメインを欠失させた場合)の相当する約10箇所に架橋をそれぞれ導入したものを細胞に発現させ、光照射して架橋を形成させ、複合体形成の部位特異性を比較した。その結果マウスLAMP-2はLAMP-1とは異なる複合体形成を示すことを見出した。また複合体形成の接触面を同定するために、架橋を形成した相手側の部位を特定するための方法の開発に着手した。さらに架橋実験の結果に基づき変異体の作成を進め、複合体形成を抑制する変異体の作成に成功した。これらの結果について投稿論文の準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでLAMP-2を中心に解析を進めてきたが、LAMP-1の複合体形成についても解析を進める。また架橋の相手側の部位を同定する新たな方法論を確立する。LAMP-1/2複合体形成を促進・抑制する変異体を複数作成し、それらを組み合わせてオートファジー、シャペロン依存性オートファジーに対する影響を調べる。その結果をもとにリソソームによる細胞内分解反応の効率を制御する低分子化合物の設計を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
作成した変異体を用いた実験の開始に時間がかかり、本来その実験に必要な経費を執行する時期がずれたため。
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