研究課題/領域番号 |
17K12007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 信和 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (20570295)
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研究分担者 |
野原 幹司 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (20346167)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 重症心身障害児者 / 嚥下機能 / 廃用 / 嚥下頻度 |
研究実績の概要 |
重症心身障害児者(重症児者)の嚥下頻度の測定を行う前の予備調査として、①唾液分泌量と嚥下頻度との関連、②重症児者における嚥下機能検査での誤嚥の有無と肺炎との関連、以上の2点の検討をそれぞれ行った。 ①については、ドライマウス症例(D群:42名)と健常者(N群:38名)を対象に、各群の安静時・刺激時の唾液量と嚥下頻度(20分間)をそれぞれ測定し、両群の唾液量ならびに嚥下頻度を比較した。さらに、各群における唾液量と嚥下頻度の相関を調べた。その結果、安静時唾液量はD群1.1±1.2g、N群4.5±4.9g、刺激時唾液量はD群10.5±6.9g、N群 16.9±9.2gとなった。嚥下頻度については、D群18.8±11.1回、N群18.3±12.3回となった。N群と比較しD 群では、安静時、刺激時ともに唾液量が有意に少なかった(P<0.01)一方で、嚥下頻度に有意な差は認められなかった。 また、N群の安静時唾液量のみ嚥下頻度と低い正の相関が認められた(r=0.35,P<0.05)。 この結果は、嚥下頻度が唾液分泌量以外の因子の影響を受けている可能性があることを示していると考えられた。 ②については、85名の嚥下障害を有する重症児者を対象に、嚥下内視鏡検査での誤嚥の有無と胸部CT上の炎症所見との関連を検討した。その結果、食物誤嚥と胸部CT所見には関連が認められなかった。その一方で、唾液誤嚥と胸部CT上の炎症所見には有意な関連が認められ(P<0.01)、そのなかでも気管支壁肥厚(P=0.009)と無気肺(P=0.038)で有意な関連が認められた。 この結果は重症児者において、唾液誤嚥が認められる症例は、慢性的な嚥下機能低下が生じている可能性があることを示していると考えられた。そのため、唾液を処理する動作である嚥下が生じる頻度の多寡は、嚥下機能の指標として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
測定を予定していた施設の体制の変更や施設の改装があったため、対象者のピックアップと嚥下頻度の測定の実施を延期する必要があった(日常の生活場面での測定を考えているため)。倫理委員化による承認を受けた後は、対象者の再選定と対象となった症例に同意を得る作業を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者への説明と同意、対象者の選定が終了した施設から、データの採取を順次行っていく。各症例における嚥下頻度の測定・比較を行う。対象は、①全員経口摂取の重症児者、②一部経口摂取の重症児者、③全量経管栄養の重症児者を予定している。嚥下頻度はいずれの対象者においても、1)日中活動時、2)食事摂取時、3)夜間就寝時、の条件での測定を予定している。データの採取が順調に進んだ場合、上記の条件で嚥下頻度を測定したなかで、一部経管栄養症例における摂取量アップ前後、あるいは全量経管栄養症例における経口摂取開始前後の嚥下頻度の変化を検討する。対象は②、③の被験者から選定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際の測定が遅れているため、測定時に必要とする備品の購入がまだ行われていないこと、また測定やデータ解析の協力に対する謝金を支払う必要がなかったことが挙げられる。
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