研究課題
ベーチェット病は口腔内アフタ性潰瘍、眼のぶどう膜炎、皮膚症状、外陰部潰瘍を4大主症状とする難治性炎症性全身疾患である。ベーチェット病の原因は未だ不明のままであるが、これまでの研究により遺伝要因と環境要因が疾患発症に関連していると考えられている。現在までにプラークの初期付着に関与している連鎖球菌Streptococcus sanguinisの役割が注目されてきたが、原因や機構の解明には至っていない。本研究ではベーチェット病発症に先行してほぼ全例で口腔粘膜のアフタ性潰瘍が発症することに注目し、その環境要因解明のため次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析によって口腔細菌叢を調査し、疾患の原因解明に加え、将来的な予防および適切な治療法開発について検討することを目的とする。平成31年度は、これまでに解析を行ったベーチェット病患者27名、サルコイドーシス患者26名,Vogt-小柳-原田病患者17名および健常者30名のデータを統合してβ多様性解析を行い、群間の環境要因の関連性を検討した。すべてのグループにおいてPERMANOVA(Permutationalmultivariate analysis of variance)検定により比較検討を行ったが有意差は得られなかった。また、属レベルでの細菌種構成は,ベーチェット病と同様にVeillonella,Streptococcus,Prevotellaが多いものの、属レベルでの大きな差は認められなかった。以上の結果から、日本人においてこれらの疾患を有する患者および健常者の間では、唾液中の口腔細菌叢には大きな差がないと考えられる。