研究課題
申請書は平成30年度に、前年度に実施して得られた結果を基に、口腔試料を対象としたHelicobacter pyroli(ピロリ菌)選択培地を開発した。すなわち、コロンビア寒天培地に10%ウマ血清を添加したコロンビア血清寒天平板培地を基礎培地とし、抗菌薬感受性試験で得られたデータを基に、ピロリ菌以外の口腔細菌の発育を阻害する抗菌薬として、Bacitracin、Vancomycin、Colistin、ST合剤を適当量添加したものをピロリ菌分離用選択培地とした。本選択培地は、臨床検査室などで実際の医療現場で用いられている既存のピロリ菌選択培地(コロンビアHP寒天培地;日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、ピロリ寒天培地;シスメックス・ビオメリュー株式会社)と比較して、有意にピロリ菌以外の代表的な口腔細菌の発育を阻害した(阻害率99.9999%以上)。なお、菌種同定はPCR法を用いるために、ピロリ菌特異的プライマーを設計して行った。H31年度は、200名の唾液試料を採取し、本選択培地に接種・塗抹・培養したところ、わずか3名の被験者からのみピロリ菌が検出され、唾液中に検出されたピロリ菌の菌数も少なかった。本年度の予定として、ピロリ菌保菌親子の唾液試料から得られたそれぞれのピロリ菌分離菌株に対して、AP-PCR法を利用した遺伝子多型解析を行い、親から子への唾液を介した感染・伝播の可能性を検討することとなっていたが、ピロリ菌検出者がそもそも少なかったために、実施することが出来なった。本研究において、ピロリ菌は200名の被験者のうち、わずか3名からのみの検出に留まったことにより、ピロリ菌にとって口腔は好ましい生息部位ではなく、外部から経口感染により本菌は口腔に住み着くことなく口腔を通過し、好ましい生息場所と考えられる消化管・腸管などに感染・常在化するものと考えられた。
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日本口腔検査学会誌
巻: 12 ページ: 3-10
巻: 12 ページ: 39-45