研究課題
口腔の健康と全身の健康の相関性が言われて久しいが、口腔の健康増進が全身の健康増進に寄与するという因果関係を示すエビデンスは極めて限られている。「口腔の健康」を保健医療施策の中で確固たる位置づけにするには、エビデンスレベルの高い研究デザインによって、その成果を蓄積することが大切である。本研究は、血管内皮細胞の機能に焦点を当て、「口腔の健康増進が全身の健康増進に寄与する」という因果関係を示すエビデンスをランダム化並行群間比較試験によって作りだすことを目的としている。さらに血管内皮細胞の機能評価である「血流依存性血管拡張反応検査(Flow Mediated Dilation ; FMD)」に加えて非対称性ジメチルアルギニン(Asymmetric dimethylarginine; ADMA)の歯科での有用性を示す。初年度はインターネットや広報誌で募集した中等度までの歯周病罹患被験者110名に対してランダム化並行群間比較試験を行った。介入項目は、90日間の3DS(dental drug delivery system)による除菌である。主要評価項目は、血管内皮機能(ADMA解析およびFMD測定)、副次的評価項目は、臨床所見(歯式、歯周ポケット深さ、プロービング時出血)、歯周ポケット内プラーク中の細菌の質的・量的分布および炎症性マーカーを採用した。今年度は介入前後で得られた口腔診査(歯式、歯周ポケット深さ、プロービング時出血)およびFMDの値の結果について記述統計を行った。さらにADMAを含む各種マ-カ-については血液生化学検査を外部委託し、データを収集した。
2: おおむね順調に進展している
インターネットや広報誌で募集した中等度までの歯周病罹患被験者110名を対象に行ったランダム化並行群間比較試験の結果を収集し、分析を行っている段階である。主要評価項目であるADMAを含む各種マ-カ-については血液生化学検査を外部委託し、データを収集を完了した。副次的評価項目である口腔診査(歯式、歯周ポケット深さ、プロービング時出血)およびFMDの値の結果について記述統計を行った。現在は歯周ポケット内プラーク中の細菌のDNA抽出を行っている。
臨床試験によって得られた介入前後の各サンプルについて解析を順次進めていく。得られたデータについては、個人識別管理を行い、対応表を有する匿名化を行うことにより、研究者等に被験者の特定ができないようにして管理する。匿名化したデ-タのみを使用し、統計解析を行う。その結果から口腔の健康状態と血管内皮機能との因果関係を分析し、さらにFMDとADMAとの相関についても検証する。
細菌解析に使用する器材に不具合が生じた結果、修理に時間がかかり、一部次年度に持ち越すことになったため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求する助成金と合わせて、細菌解析に使用する計画である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)
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