研究実績の概要 |
「免疫チェックポイント阻害剤」は、担癌患者の免疫抑制状態を解除する画期的な癌治療薬で、高齢の癌患者にも広く用いられている。しかしながら、副作用である過剰な免疫応答を抑制するために、免疫抑制剤のプレドニゾロンが併用されるため、高齢者では感染症としての口腔カンジダ症の起こるリスクが高まる。 本研究は、「免疫チェックポイント阻害剤」を用いた高齢者の癌治療時のプレドニゾロン投与が誘因となるカンジダ症の発症メカニズムを、口腔カンジダ症マウスモデルによるin vivo実験で解明するために実験をおこなった。 本年度は、以下の結果を得た。①マウスの腸内細菌叢構成細菌のゲノムDNAを解析した結果、コントロール群に比較してプレドニゾロンの投与群は, Firmicutesが大きく増加し, Bacteroidesが減少した。テトラサイクリン含有水道水を飲水させた群では, プレドニゾロン投与群とは反対にFirmicutesが減少し, Bacteroidesが増加した。プレドニゾロンの投与とテトラサイクリン含有水道水の飲水の両方を行った場合は, Firmicutesが減少し, Bacteroidesが増加した。②テトラサイクリン含有水道水の飲水のみを行った場合をコントロールとすると, プレドニゾロンまたは抗PD-1抗体を投与した場合は腸管内のC. albicans菌数が同程度に有意に増加した。一方, プレドニゾロンと抗PD-1抗体投与の両方を行った場合は,コントロールに比較してC. albicans菌数が増加しただけでなく, テトラサイクリン含有水道水の飲水とプレドニゾロン投与の両方を行った場合よりもC. albicans菌数が有意に大きく増加した。 以上の結果から, 抗PD-1抗体の投与によって起こる宿主の免疫応答の修飾が腸管内におけるC. albicansの定着を亢進させることが示された。
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