研究課題
わが国は超高齢社会に突入して久しいが、健康寿命と生物学的寿命の間の大きな乖離をなくすことが現時点での課題である。そのためには、「疾患の予防」(生活習慣病等)ならびに「介護状態の予防」(フレイルの予防)を行うことはいうまでもない。加齢に伴い唾液中のグリシン、プロリン量が末期破綻的に上昇することを報告(坂上ら)してきたことから、その老化マーカーとしての新たな検索および簡便測定系の確立を目的として研究を行った。本研究においてあらかじめ同意の得られた66歳から78歳(平均年齢72.5歳)までの水中運動療法施行者4名(男性2名、女性2名)ならびに26歳から65歳(平均年齢38.75歳)までの健常者8名(男性6名、女性2名)を対象とした。検体として採取された唾液(アミノ酸分析、メタボローム解析)、尿、口腔内細菌数、口臭をもとに水中運動に、抗菌・口臭予防効果や唾液・尿中成分(グリシン・プロリン等)の変化があるか否か、各種運動機能向上効果の改善の指標となるかを検討した。【結果】1)尿中8-OHdG(8-オキソグアニン)値は、数値に多少バラつきがみられるものの減少傾向を示した。2)水中での運動負荷により口腔内細菌数・口臭には明らかな差は認められなかったが、唾液中Gly,Pro量が低下していた。3)水中運動療法を受ける被験者と健常者を比較した場合、前者のほうが唾液中の様々な物質の絶対濃度が高いことが観測された。4)健常者に関しては日内変動の影響をみるために、午前と午後で唾液のサンプリングをしてその値を比較をしたが変動は僅かであった。5)唾液中の物質は水中運動療法の回を追うごとに全体的に徐々に健常者に近づいていた。6)水中運動療法に関わる有意差の見られる15の物質が判明した。
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