研究実績の概要 |
本研究課題の目的は施設入所者におけるオーラルフレイルと食環境との関係を明らかにすることである。そこで、口腔機能低下症の診断基準である舌苔付着程度に着目し、舌苔付着程度に影響を与える因子について本研究を行った。特別養護老人ホーム入所者41名(男性5名,女性36名,平均年齢88±8歳)を対象とした。施設職員による歯面清掃および舌清掃を行ったのち,朝食後以降の口腔清掃を禁止した。舌苔の付着程度は昼食摂取後,Shimizuらの方法にて評価を行った。舌苔の付着程度に関連する因子として,舌表面の水分量,舌背の微生物数、食事形態,介護度,性別とした。舌表面の水分量は口腔水分計ムーカス(Life, Saitama, Japan)を用いた。舌の先端から約10mmの舌背中央部にセンサーを圧接して3回計測し,中央値を求めた。舌背の総微生物数は細菌数測定装置細菌カウンタDU-AA01NP-H(Panasonic Health Care, Tokyo, Japan)を用いた。試料は舌正中溝上の舌分界溝前方部より前方へ5回スワブすることによって採取した。食事形態,介護度,性別の調査は担当看護師に対する質問紙法で行った。舌苔の付着程度と各因子との相関関係はSpearman順位相関係数にて分析した。また舌苔の付着程度を平均値で2群に群分けを行った上で,それぞれに関係する因子をロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)にて分析した(α=0.05)。舌苔の付着程度は,平均43.7±16.8であった。舌苔の付着程度と舌背の微生物数(r2=0.449,p=0.003), 副食における食事形態(r2=0.388,p=0.012)と介護度(r2=-0.308,p=0.050)との間に相関関係が認められた。ロジスティック回帰分析では副食における食事形態が舌苔の付着程度に影響する因子として選択された。
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