本研究は、ヒトから採取された歯肉溝滲出液を用いるため、H29年度中に日本大学松戸歯学部の倫理審査委員会に本研究の申請を行い、承認を得ている。糖尿病患者と非糖尿病患者(健常者)の選別には、当学部に併設されている附属病院の内科医師の診断のもとに行うこととした。糖尿病罹患を察知できる検査キットの培地組成は、申請者らが平成30年度の計画で開発した糖尿病診断に有用な健常バイオマーカー菌であるC. matruchotii 分離用選択液体培地に、指標となる健常バイオマーカー菌が分解して酸を産生することが可能な炭水化物とpH 指示薬であるBromocresol purple を添加したものである。これを0.2mL のPCR チューブに20μL分注し、臨床で採取した歯肉溝滲出液が浸み込んだペーパーポイントを挿入し、37℃糖尿病診断検査キットのイメージで培養を行い、健常バイオマーカー菌の糖分解能を応用したpH 指示薬による色調変化によって、基準値を設定したカラーチャートに従って判定を行う。実際に臨床で本キットが有用であるか否かを確認するために、本学大学病院に来院する非糖尿病患者50名および糖尿病患者50名の歯肉溝滲出液を滅菌ペーパーポイントにて採取した。通法に従った選択培地による培養法による菌数の確認と総菌数に対する検出比率を確認した。それらの結果と開発する本検出キットの結果と比較検討を行った結果、両結果に相関が認められたことから、本検出キットの有用性が確認できた。次に基準値の設定を調査した結果、糖尿病群の全ての被験者が24時間後に本検出キットが紫から黄色へと色調変化したのに対し、非糖尿病群の全被験者では色調変化を認めなかった。そのため、本検出キット色により色調変化が認められた者は、糖尿病に罹患している可能性があると推定できる判断材料となり得ることが判明した。
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