研究課題/領域番号 |
17K12059
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
有川 量崇 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50318325)
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研究分担者 |
Bhawal Ujjal 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (50433339)
田口 千恵子 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (80434091)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 唾液 / 高齢者 / 老化 / 時計遺伝子 / DEC1 |
研究実績の概要 |
近年、多くの高齢者が口腔乾燥症により摂食・嚥下困難、味覚異常、口腔違和感を訴えており、その数は増加傾向にある。唾液腺樹状細胞が唾液腺健康維持に重要な働きをしていることが明らかになり、唾液腺の感染防御機構やシェーグレン症候群など唾液腺疾患の発症機序の解明にも大きく貢献することが期待されている。加齢は唾液腺の機能低下に影響を及ぼすが、その具体的なメカニズムは明らかでない。本研究目的は、加齢における唾液腺のmiRNA発現を解析し、miRNA標的の可能性のある遺伝子を同定することである。3ヶ月齢および加齢モデルの24ヶ月齢のC57BL / 6マウスを使用し、トータルRNAを唾液腺組織から分離した。それらの遺伝子発現およびmiRNA発現所見は、GeneSpringおよびIngenuity Pathways Analysisと組み合わせ、DNAマイクロアレイおよびmiRNAアレイを用いて解析した。遺伝子オントロジー(GO)分析は、miRNAを標的とした遺伝子の極めて重要な転写関連プロセスと細胞内シグナル伝達を組み込んでいることを明らかにした。シグナル経路で、cAMP媒介シグナル、上皮接着結合シグナル、タイトジャンクションシグナル、ギャップジャンクションシグナル、カルシウムシグナル、およびサーチュインシグナルが唾液腺老化に関与していることも明らかにした。RT-qPCRによりさらに解析したところ、時計遺伝子が、miR-30c-1-3p、miR-34a-5p、miR-92a-3p、miR-181a-5pおよびmiR-550a-3pの制御に関与していることを示した。多数の組み合わせが識別されたmRNAとmiRNAの網羅的解析は、miRNAの異常発現は唾液腺加齢において重要であることを示唆した。そして、その機能は関連シグナル上の特定遺伝子の転写を通して誘導されることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は、3ヶ月齢および加齢モデルの24ヶ月齢のC57BL / 6マウスを使用し、トータルRNAを唾液腺組織から分離し、唾液腺における老齢化過程のメカニズムの解明することを目的とした。それらの遺伝子発現およびmiRNA発現所見はDNAマイクロアレイおよびmiRNAアレイを用いて解析した。遺伝子オントロジー(GO)分析を行い、RT-qPCRによりさらに解析したところ、時計遺伝子が、miR-30c-1-3p、miR-34a-5p、miR-92a-3p、miR-181a-5pおよびmiR-550a-3pの制御に関与していることを示すことができ、ほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivo研究結果から網羅的遺伝子及びmicroRNA発現解析により同定された遺伝子及びmiRNAを臨床研究として、ヒト唾液サンプルを用いて検討する。被験者は日本大学松戸歯学部付属病院にて受診するドライマウス高齢者10名と、非ドライマウス若年者10名とする。被験者唾液をサンプルとし、Quantikine ELISA Kit (R&D Systems, MN, USA) を用いて炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α) やミエロペルオキシターゼ (MPO) 活性をELISA法にて解析し、ヒトにおける老化の評価を行う。 また、ELISA法にて酸化ストレスマーカーである8-hydroxy-2’-deoxyguanosine (8-OHdG)を測定する。また、ELISA法にてDEC1およびE-cadherinの測定を行う。HRP標識抗マウスIgM抗体を加え一時間静置、OD 405 nmで測定する。有意差検定はt-検定を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト臨床研究の実施期間が来年度となり、本年度実施する予定のヒトのサンプル採取を、来年度に実施することにしたため、本年度分の研究費がその分抑えられたが、次年度使用する予定である。
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