研究課題
近年、多くの高齢者が口腔乾燥症により摂食・嚥下困難、味覚異常、口腔違和感を訴えており、その数は増加傾向にある。唾液腺樹状細胞が唾液腺健康維持に重要な働きをしていることが明らかになり、唾液腺の感染防御機構やシェーグレン症候群など唾液腺疾患の発症機序の解明にも大きく貢献することが期待されている。加齢は唾液腺の機能低下に影響を及ぼすが、その具体的なメカニズムは明らかでない。本研究目的は、加齢における唾液腺のmiRNA発現を解析し、miRNA標的の可能性のある遺伝子を同定することである。本研究において、老化過程における唾液腺のメカニズムに時計遺伝子DEC1との関連性を検討した。ルシフェラーゼ・アッセイでDEC1強制発現によるE-cadherin転写制御機構の解析を行った。PromoterはE-boxを含む約E-cadherin promoterを使用した。E-cadherin転写活性が約3.5倍抑制され、その抑制された活性はDEC1発現plasmidを濃度依存的に強制発現しても抑制がみられた。またE-cadherin遺伝子上流のE-boxにmutationを作製し、luciferase assayでDEC1強制発現によっても、E-cadherin転写活性は影響を受けなかった。DEC1強制発現によってE-cadherinの発現をリアルタイムPCR法およびウェスタンブロッティング法にて明らかにした。さらに、Chromatin immunoprecipitation (ChIP assay) を用いてDEC1がE-cadherinのE-boxに影響を及ぼすか調べた。コントロールと比べ、DEC1強制発現によりE-cadherinのprecipitateする量が増加した。また、ChIP assayを用いて癌細胞にDEC1 siRNA導入することによってE-cadherinのprecipitateする量が抑制した。以上のことから、DEC1によるE-cadherin制御機構の可能性が推察された。DEC1とE-cadherinの分子機構を解明することから、唾液腺の老化メカニズムにフィードバックが可能になった。
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