研究課題/領域番号 |
17K12061
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
遠藤 眞美 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (70419761)
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研究分担者 |
岡田 裕之 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (70256890)
野本 たかと 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (80246925)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔ケア / 歯ブラシ / 機能評価 / 評価モデル / 終末期患者 |
研究実績の概要 |
終末期患者の口腔ケア評価表が目的である.評価表には適切な歯ブラシ選択を可能とする内容が求められるが,客観的選択基準はない.そこで,多様な状況で歯ブラシ選択に応用できる評価表作成を目的に,直径8mm の半円柱を平面に設置した凸型単半円柱(SHC)モデルと平面モデルを開発し,ビデオテープ法を応用して歯ブラシを評価した. SHCモデルの実験では,フラットなRO-S1,スーパーテーパード毛ST-M,複合段差植毛FU-Lの歯ブラシで追従性と清掃性を評価した.平面モデルの実験では,スーパーテーパード毛のヘッドが極めて大きいST-LL,少し大きいST-L,コンパクトのST-S,コンパクトヘッドでラウンド毛のRO-S2で清掃性,毛のたわみの指標に臨界ストローク,刷掃時の垂直方向の刷掃幅の増加量ΔWを評価した.RO-S1は接触領域の高い清掃性と低い追従性,ST-Mは高い追従性と低い清掃性,FU-Lは高い清掃性とRO-S1とST-Mの中間の追従性であった.平面モデルでは,完全剥離面積はST-LL<ST-L<ST-S<RO-S2の順に広く,完全+部分剥離は低荷重と少ない刷掃回数でヘッドサイズが大きいST-LLが最小値,高荷重および多い刷掃回数では大きいヘッドの方が広かった.臨界ストロークは,毛の太いRO-S2が最も短く,ヘッドが大きいと短かった.ΔWはラウンド毛に比較してスーパーテーパード毛で大きく,スーパーテーパード毛間ではヘッドが大きいほど小さかった. 清掃面に歯ブラシを効率的に接触させることが困難な場合,高い追従性のためには複合段差植毛や大きいヘッドのスーパーテーパード毛が有効と推察された.特に,スーパーテーパード毛では清掃性が低いため,大きいヘッドによる接触面積の確保が有効と示唆された.ただし,大きいヘッドでは毛先に対する力の分散が生じるために弱すぎない力と回数増加の必要性が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は,終末期患者に対して心地よい口腔ケアを通してその方らしい人生を閉じることに寄与できるように,適切な口腔ケアアセスメントシートの開発とふさわしいプロフェッショナルイズムを持ち合わせる歯科医療者の育成のための教育内容の構築が目的である. 口腔アセスメントシートには,自分の困っていることを訴えられない方であっても口腔内状態を正確に反映させるため口腔粘膜細胞の評価を応用し,臨床研究でその有用性を立証する予定であった.しかし,新型コロナウイルス感染症蔓延のために予定していた施設での協力を頂くことができなくなり,実際の臨床応用が難しくなり本内容の遂行は中断となってしまった.一度,本年度は臨床研究の再開を計画できていたが,施設内で新型コロナウイルス感染症のクラスターが生じ,今年度の再開は中止となった. そこで,昨年度から立案している口腔ケアプランを意識した評価表作成を意識した適切な用具選択に向けて歯ブラシの機能評価を行った. また,昨年度まで継続していた歯科医療者を目指す学生の意識調査等についても同様に,対面講義の状況が不安定なために解析可能な状況までの回収が困難であり,分析までには至っていないために遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
世界的に経験している新型コロナウイルス感染症蔓延によるコロナ禍では,人の人生の終え方,終わり方が大きく変わっており,新たな死生観などがうまれてきている.また,口腔ケアは一時期,新型コロナウイルス感染症の感染リスクが高い行為として控えられてきた一方で,最近では口腔ケアこそが感染症予防に重要であると言われるようになり,メディアなどでも再度,注目をあびている。特に,終末期を過ごす方が苦痛なく人生を閉じるには,新たな感染症などの感染を防ぎながら口腔機能を通して健康支援のできる効果的で効率的で心地よい口腔ケアが求められる。従って,EBMに基づいた口腔ケアプランを立案できる評価表の作成のニーズはより高くなるものと考えられる. 一方で,新型コロナウイルス感染症蔓延によって当初予定していた高齢者入所施設での臨床研究や歯科医療者を目指す学生および医療職に対する対面での意識調査は難しい可能性が高く,次年度は過去の調査結果を詳細に再検討しながら,新たに新型コロナウイルス感染症蔓延後の医療職の倫理観等の変化について調査を検討したいと考えている.その際,今までは対面を中心に調査を行ってきたが,急速に拡大したインターネットやモバイルの応用も検討していきたい. また,本年度行ってきたケアプランに直結する用具選択に向けて歯ブラシの機能評価等も併行して実施していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,新型コロナウイルス感染症蔓延のために,ヒトを対象とした研究内容の遂行が著しく困難となった。特に,高齢者の入所施設での調査が中止になった影響で,調査用のサイトブラシやスライドガラスなどの消耗品,診査用紙,データ解析用ソフトや保存機器,学生を中心とした医療職の質問票調査の用紙代や印刷経費が不要になり,費用の使用予定額と大幅な差異が生じた。また,国内および国際学会の多くが中止またはオンラインとなり,予算額と大きな差異が生じた.次年度は,過去の内容を分析し,論文発表をするための投稿費として使用などを考えている。
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