我々はこれまでに、視覚素材からの視知覚情報取得に際し、サッケードが少なく停留点主体で時計回りの眼球運動パターンが効率的なパターンであることを発見した。さらに、異なる視覚素材提示方法(反射光下、透過光下)においても同様に視知覚情報を得ていること、画像の観察においては透過光下が適していることを発見した。 サッケード主体の情報探索パターンを示す学生は、視覚素材から殆ど情報を取得できていないことが明らかとなっている。視覚素材から情報を得る探索眼球運動において、停留点やサッケードの減少は主体性や自発性の低下を表す。視覚情報探索時にどこに目を向けるか?の判断は前頭葉の前頭眼野において決定されるため、停留点、サッケードが極端に少ない学生は前頭葉の活動低下が起きている可能性があると考えられる。そこで我々は、光イメージング脳機能測定装置:OEG-16を用いて眼球運動時の前頭葉機能を測定した。その結果、これまでには認められなかった、視覚素材以外を観察する、という新しい眼球運動パターンを持つ被験者を発見した。これらの被験者は、前頭葉の活性が低く、光イメージング脳機能測定装置(スペクトラテック社、OEG-16)のNo.1、No.16センサーのみが反応していた。No.1とNo.16センサーが感知できる脳領域は、BA10(前頭極)とBA46(背外側前頭前野:DLPFC)であるため、興味を持って視覚素材以外を見ていることになる。このように、背外側前頭前野:DLPFCの活性が視覚素材観察時のモチベーションと関係していることが示唆された。DLPFCは事象の判断、意欲、興味を司るため、機能低下がモチベーションの低下に直結すると予想される。今後は、眼球運動、心理状態がDLPFC活性にどのような影響を与えるか分析を行い、歯科医学生の学習意欲の向上のプロセスを解明したい。
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