研究課題/領域番号 |
17K12067
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
大貫 芳樹 鶴見大学, 歯学部, 講師 (50288114)
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研究分担者 |
梅木 大輔 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10514937)
成山 明具美 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90440304)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不正咬合 / 心筋 / 線維化 / アポトーシス / Ca2+ |
研究実績の概要 |
本年度(令和元年度)は、16週齢の雄性マウス(C57BL/6)を①コントロール群、②不正咬合群(下顎切歯に咬合挙上板を装着)、③propranolol(β受容体遮断薬)投与群(propranololを含む飲料水(1 mg/mL)を自由摂取)、④不正咬合+propranolol投与群の4群に分けて2週間後に心臓を摘出し、不正咬合による口腔ストレスが心臓に及ぼす影響を組織化学的ならびに分子生物学的手法を用いて詳細に解析した。 Masson-trichrome染色およびTUNEL染色の結果、不正咬合群では心室の線維化とアポトーシス陽性細胞の有意な増加が認められたが、それらの心筋リモデリング(線維化とアポトーシス)はpropranolol投与により抑制された。一方、心室から抽出したタンパク質を用いてウエスタンブロッティングを行った結果、アポトーシスの指標となるBax/Bcl-2比は不正咬合群で有意に増加したが、その増加はpropranolol投与により抑制された。また、細胞内Ca2+ハンドリング因子であるホスホランバン(PLB)のリン酸化レベル(Ser16、Thr17)およびそのリン酸化酵素であるCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼⅡ(CaMKII)のリン酸化レベルは不正咬合群で有意に増加したが、その増加はpropranolol投与により抑制された。さらに、不正咬合群ではオートファジー関連因子であるLC3-Ⅱ/Ⅰレベルの減少とp62レベルの増加が観察されたが、これらの変化はpropranolol投与により抑制された。加えて、酸化ストレスの指標となる8-OHdGおよびタンパク質カルボニル化は不正咬合群で有意に上昇したが、その上昇はpropranolol投与により抑制された。以上の結果は、不正咬合による慢性的な交感神経活動の亢進が、細胞内Ca2+の過負荷ならびにオートファジー機能の低下による酸化ストレスの上昇を介して心筋リモデリング(線維化およびアポトーシス)を誘導することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り作製したモデルマウスを用いて、不正咬合による口腔ストレスが心臓に及ぼす影響を形態と機能の両面から詳細に解析し、その研究成果を学術論文(循環制御、2020)および関連学会(第61回歯科基礎医学会学術大会、第97回日本生理学会大会)にて発表しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後(令和2年度以降)は、本年度と同様に不正咬合モデルマウスを用い、口腔ストレスが心筋の線維化およびアポトーシスを誘導する分子機序について解析を進める。特に、ホスホランバンやリアノジン受容体のリン酸化によるCa2+ handling機能の慢性的な亢進だけでなく、心筋症の原因となるオートファジー機能の低下や酸化ストレスの上昇も不正咬合により誘導されたことから、これらに関連するシグナル伝達因子について詳細に解析する予定である。また、心筋リモデリング(線維化およびアポトーシス)に伴う心機能および心臓自律神経機能への影響もテレメトリーシステムを用いた心電図記録や心エコーを用いて解析を進める。得られた研究成果は、関連学会における発表と学術雑誌への論文投稿を通して発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じた理由は、当初の開催予定であった第97回日本生理学会大会(別府、3日間)が新型コロナウィルス感染症の拡大状況により集会を中止し誌上開催となったことである。また、研究の進捗状況からテレメトリーシステムの送信機再生委託をする必要がなくなった。次年度は上記のテレメトリーシステムを用いた実験に加えて、心筋における酸化ストレスレベルとオートファジー機構を解析する実験を計画しているため、次年度使用額は、抗RIP3抗体等のウエスタンブロッティングの試薬の購入費として使用する予定である。
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