研究課題
本研究課題の補助事業期間において、16週齢の雄性マウス(C57BL/6)を①コントロール群、②不正咬合群、③propranolol(β受容体遮断薬)投与群、④不正咬合+propranolol投与群の4群に分けて2週間後に心臓を摘出し、不正咬合による口腔ストレスが心臓に及ぼす影響を解析した。心電図の心拍変動(HRV)解析を行った結果、コントロール群に比べて不正咬合群ではパワースペクトルの低周波(LF)成分と高周波(HF)成分の比(LF/HF、交感神経活動の指標)が実験期間(2週間)を通して有意に高いことが観察された。Masson-trichrome染色およびTUNEL染色の結果、不正咬合群では心室の線維化とアポトーシス陽性細胞の有意な増加が認められたが、それらの心筋リモデリングはpropranolol投与により抑制された。一方、ウエスタンブロッティングを行った結果、細胞内Ca2+ハンドリング因子であるホスホランバンのリン酸化レベル(Ser16、Thr17)およびそのリン酸化酵素であるCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼⅡのリン酸化レベルは不正咬合群で有意に増加したが、その増加はpropranolol投与により抑制された。また、不正咬合群ではオートファジー関連因子であるLC3-Ⅱ/Ⅰレベルの減少とp62レベルの増加が観察されたが、これらの変化はpropranolol投与により抑制された。さらに、酸化ストレスの指標となる8-OHdGおよびタンパク質カルボニル化は不正咬合群で有意に上昇したが、その上昇はpropranolol投与により抑制された。以上の結果は、不正咬合による慢性的な交感神経活動の亢進が、細胞内Ca2+の過負荷ならびにオートファジー機能の低下による酸化ストレスの上昇を介して心筋リモデリング(線維化およびアポトーシス)を誘導することを示唆する。
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PLoS One
巻: 15 ページ: e0236547
10.1371/journal.pone.0236547
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 13765
10.1038/s41598-020-70791-8