研究課題
2025年に65歳以上の5人に1人が認知症に罹患すると厚生労働省は推計している。認知症は要介護状態に陥る主な原因の一つであるため、社会的にも認知症の予防が重要である。近年、認知機能低下は咀嚼機能の低下に関係すると報告されている。加齢とともに咀嚼機能は低下するため、咀嚼に代わる刺激(口腔粘膜の刺激)が認知機能を賦活化することができれば、高齢者の認知症の予防に重要な役目を果たすと考えられる。本研究は口腔粘膜の脳機能局在部位を明らかにし、口腔粘膜に対する刺激が脳の賦活化にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。これにより、歯肉マッサージのような口腔粘膜の刺激が認知機能の低下を防ぎ、認知症の発症を減少させ、健康寿命の延伸が期待できると考えられた。しかしながら、新型コロナウイルス感染予防の観点から、実際に高齢者を対象に前向き調査で口腔粘膜と脳機能の関連を調査することができなかったため、後ろ向き研究として、認知機能低下を有する高齢者を対象に認知機能と口腔関連項目との関連を調査した。対象として、精神科医により認知症およ軽度認知障害として診断された60歳以上の高齢者とした。また、調査項目として、現在歯数、義歯使用の有無などの口腔関連項目、生活様式、認知機能、脳萎縮の程度とした。結果として、現在歯数と脳の萎縮度に関連が見られた。これより、現在歯数が認知機能低下の指標となる可能性が示唆された。