研究課題/領域番号 |
17K12074
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松田 友美 山形大学, 医学部, 教授 (90444926)
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研究分担者 |
石田 陽子 山形大学, 医学部, 講師 (60322335)
菅野 恵美 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10431595)
櫻田 香 山形大学, 医学部, 教授 (60312732)
片岡 ひとみ 山形大学, 医学部, 教授 (40404933)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 深部損傷褥瘡 / DTPI / 好中球 / 好中球枯渇 / KC / 炎症性サイトカイン / 創傷治癒遅延 |
研究実績の概要 |
本研究は、深部損傷褥瘡(Deep Tissue Pressure Injury: DTPI)の炎症誘導機序の解明とDTI発生初期およびDTI治癒調整・促進の適切な看護ケア技術の開発を行うことを目的としている。今年度は、圧迫創の創中心部は好中球遊走が遅延し、それに伴い創傷治癒過程の遅延が認められることに着目し、圧迫創における好中球の動態と役割確認を目的として実験を行った。実験はJcl/ ICR雄性マウスを用い、対照(無処置)群、好中球枯渇群(各群各サンプリングn=4)に分けた。実験方法は好中球枯渇群は、anti-mouse Ly6Gモノクローナル抗体を用い腹腔内に投与し、対照群はアイソタイプコントロールのIgGを投与して作製した。対照群と好中球を枯渇した対象動物に我々の手法で圧迫創を作製し、創の作製後0、3時間、1、3、7日目にサンプリングした。組織は圧迫創の皮膚筋層と対側の非圧迫部位を摘出し、パラフィンブロック標本用およびフローサイトメトリー用に1/2ずつ分けた。組織観察用標本は、10%ホルマリン固定し、定法に従って作製したパラフィンブロックから切片を作製後HE染色を施した。また、フローサイトメトリー解析はCytometric Bead Array(CBA)を用いてサイトカインの多項目同時定量解析を行った。肉眼的所見では枯渇群の創は治癒に遅延傾向が認められた。サイトカインの変化は好中球の枯渇群は、ケモカイン(KC)が持続的に対照群より増加し、炎症性サイトカイン(MCP-1,IL-1β、TNF)は上昇が遅延しており、炎症期が遷延したと考えられた。初期の炎症が遷延し炎症性サイトカインの増加が後発することにより炎症が増悪することで、創傷治癒の遅延を引き起こす可能性が示唆された。圧迫創において、初期の好中球の遊走が適切に行われることが慢性炎症への移行を防ぐ可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画に準じて進行しているため
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今後の研究の推進方策 |
今後は、好中球の役割の検証を行うためn数を増やし、KCおよび炎症性サイトカインの圧迫創における局在性や分布についても確認したい。さらに臨床における看護ケア方法への応用を考慮し、好中球の遊走のためのケア開発や炎症を遅延・悪化させないよう看護ケア介入時期に拠る対応の仮説検証実験を計画する。炎症の抑制や促進など、創傷治癒調整の可能性を探り、介入方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度の研究進行がやや遅れたことにより、研究の検討会の遅延があり、研究分担者の研究費の使用が遅れたため。
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