研究課題/領域番号 |
17K12090
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
新居 学 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (80336833)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 看護の質評価 / 看護ケアテキスト / Word2Vec / 畳み込みニューラルネットワーク / Bi-directional LSTM |
研究実績の概要 |
本研究では,多様な情報による看護質評価支援における質評価精度の向上を目指している.平成29年度には投薬状況を記述した文においてその適切性を評価するため,薬剤のデータベースから用途や副作用などを記述した文を抽出して,投薬が適切だったかなどを評価できるようなシステム構築を目指した. 平成30年度は看護質評価支援システムの精度向上に注力した.投薬状況などの適切性は質評価に重要であるものの,薬剤名などが正確に記述されていないことが多く,活用には看護ケアテキストの文章理解がさらに必要であると判断した. 看護質評価支援システムはニューラルネットワークに基づいたシステムである.Word2Vecによる単語のベクトル空間表現により看護ケアテキストを数値ベクトル化し,畳み込みニューラルネットワークにより特徴抽出を行う.抽出された特徴ベクトルを用いて4つの評価クラスへ分類する.本システムの評価精度向上のためには多量の学習用データを必要とする.看護ケアテキストそのものは毎年収集されるが教師用データとして使用することのできる評価済みのテキストは初期の3年分である.そこで,平成30年度は看護質評価支援システムの学習のための疑似看護ケアテキストを自動生成する手法の開発に着手した.本研究で生成したシステムはBi-directional LSTMを利用する.Word2Vecによる単語のベクトル空間表現により数値ベクトル化された評価済みの看護ケアテキストを学習用データとし,Bi-directional LSTMを学習させた.本研究で開発した看護ケアテキスト生成法により生成された疑似看護ケアテキストの一例として,「嘔吐」に対して「制吐剤」の利用を示唆するような文章が生成されていた.このような文は学習に使用したテキストデータ中には存在しておらず,看護ケアの質評価のための文章を新たに生成していることがわかる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は平成29年度に開発に着手した手法を活用するため,看護質評価支援システムの学習用データを自動生成する手法の研究に着手した.提案手法により,一例として「嘔吐」に対して「制吐剤」の利用を示唆するような文章が生成されていることなどから,提案手法は学習用データとして利用可能な疑似看護ケアテキストの自動生成が可能であると期待できる.本手法と平成29年の手法を組み合わせれば,たとえば,「一見すると良い看護のように見えるけれども,投薬内容は適切とは言えない」というような内容の学習用データを生成することが可能となる.本手法を更に発展させ,生成した疑似看護ケアテキストを看護質評価支援システムの学習に利用することで,さらなる評価精度の向上を見込める.
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今後の研究の推進方策 |
疑似看護ケアテキスト自動生成システムの性能向上を図る.開発している薬剤の利用についての適切性判断手法などとの融合について検討する.疑似看護ケアテキスト自動生成システムにより,良質な学習用データを生成することができれば,看護質評価支援システムの評価精度向上が期待できる.疑似看護ケアテキスト自動生成システムは引き続き,数値実験を行いその性能評価を行った後,成果を報告する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降は,多量のテキストを自動生成する予定であるため,保管用のストレージの増強は必要である.また,自動生成システムと評価システムをともに実行するためには計算機の増強も必要である.成果報告のための用途の他,本研究に必要な計算環境の構築を継続する予定である.
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