マルチモーダル情報として,電子カルテ等の医療関係の情報を大量に収集するのは困難なため,これらの情報を活用して事前学習がなされ,東京大学により公開されているUTH-BERTモデルをベースにして,看護の質向上のために構築している本研究のシステムを再構築した.事前学習モデルに対して,本研究で利用している2007年から2009年に収集された看護ケアテキストを用いて転移学習を行わせた.このモデルを用いて看護ケアテキストからの特徴抽出を行い,本研究の多層ニューラルネットワークに基づく評価システムで看護ケアテキストの評価クラス分類を行った. カルテ情報を利用して事前学習されたモデルにより,単に日本語情報を利用して事前学習されたモデルを利用する場合よりも分類性能の向上をはかることができた.昨年度までの本研究の評価システムの評価性能が約72%であったところ,最終年度において実施した上述の評価システムでは約74%に向上した.日本語情報のみを利用している事前学習モデルを転移学習させたものは,本研究の従来システムと同等程度か少し性能が低い傾向であった.看護ケアテキストの評価では看護過程の内容の評価が必要であることを考慮すると,カルテ情報を利用して学習された事前学習モデルをベースにして転移学習を行い看護ケアテキスト評価用に再構築した看護の質自動評価システムにより,大きな性能向上を達成することができた.看護ケアテキスト評価とリコメンデーション作成は専門家により行っているが,正しく評価できる看護ケアテキストが実数にして約200テキスト増加したことは,今後,本評価システムを事前の予備評価として利用することにより,専門家の看護の質評価およびリコメンデーション作成の負担減につながると考えられる.
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