研究課題/領域番号 |
17K12094
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
笠原 康代 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (00610958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療安全 / 安全人間工学 / 安全教育 / 看護 / 成長・発達段階 / テキストマイニング / インシデント / 要因 |
研究実績の概要 |
対象者の成長・発達段階別にインシデントを整理し、傾向を把握した。 (方法)2施設における過去2年分の報告のうち、看護職者が関与した8,703事例を用いた。対象者の年齢別(0~15歳、16~39歳、40~64歳、65~74歳、75歳以上)に内容を整理し、記述統計量を算出した。発生経緯の記述についてはText Mining Studio 5.1(NTTデータ数理システム)で分析した。 (結果・考察)総覧すると、内服・外用が1,887件(21.7%)と最も多く、注射・点滴が1,631件(18.7%)、ドレーン・チューブ類の使用・管理が1,454件(16.7%)と続いた。年齢別に分析した結果、内服・外用、ドレーン・チューブ、転倒・転落、食事・栄養の4つで分布に特徴があった。 これらに注目して単語頻度解析をした。内服・外用は「確認」「思い込む」といった単語が全年齢層で上位にあったが、16歳以上は「配薬ケース」「持参薬」があがった。転倒・転落では、15歳以下は「母親」「説明」「転落」、16歳以上は「1人」「転倒」「過信」「トイレ」などがあがった。食事と栄養では「確認」「思い込む」が多く、15歳以下は「母乳」「母親」、16歳以上は「食札」「配膳」が多かった。ドレーン・チューブでは、15歳以下が「体動」「固定」「啼泣」、16歳以上は「自己抜去」、65歳以上では「ミトン」「自己抜去」があがった。 頻出単語と年齢の関係を対応バブル分析で検討した。誤薬は、40歳以上は似た要因で起きている可能性があり、特に65~74歳は患者要因が多いと推察される。転倒・転落は、75歳以上は1人でトイレに歩行中に多いと予想され、15歳以下とは要因間の関連が異なった。食事・栄養は、年齢で要因が異なることが推測された。ドレーン・チューブは、75歳以上で自己抜去が多くなり、15歳以下は体動によるトラブルが多いと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記述した他にも「母性・産科領域」や「小児」、「外科・内科系病棟」といった診療科に焦点をあてた分析も行った。以上のことから、対象者の成長・発達段階(年齢層)別および診療科別のインシデントの傾向をある程度は把握できたと考える。これらの知見は、今後、安全教育の内容を検討する際の基礎的資料になりえると考えている。 ただし、今回は医療施設におけるインシデント報告をもとに分析した結果であり、在宅医療においては不明確である。今後は、在宅医療も包含する形でインシデントの傾向を把握し、安全教育の内容を検討していく必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、研究計画の通りに遂行する。 (研究背景)安全に関する教育は、基礎看護学や小児看護学や老年看護学、在宅看護学等といった各専門科目においてさまざまな技術とともに教授されていることが多い。しかし、安全の観点からこれらの知見が統合された教材は少ない。対象者の特性を念頭に網羅的かつ系統的に学習できるプログラムがあれば、事故がより低減する可能性がある。 よって、平成30年度は各科目で教授している安全に関する教育内容を把握し、プログラムを構築するための基礎的資料とする。 (方法)医学中央雑誌Web 版およびPub Med を用い「看護」「医療安全」「リスクマネジメント」「教育」といった単語と、成長・発達過程を示す「小児」「高齢者」といった単語、そして「外科」「内科」「産婦人科」などの診療科を示す単語を検索語とする。収載誌発行年は2000 年から2018 年、論文種類を原著論文に限定し検索を行い、 論文タイトルおよび抄録、Mesh(シソーラス)を分析対象とする。これに加え、各専門科目のテキスト教材から 「安全」「リスクマネジメント」に関する記述内容を抽出し分析対象とする。分析は、成長・発達段階や診療科別に記述内容を整理する。そして、テキスト文書における高頻度の単語や、重要単語に共起する単語の構造から特徴を把握する。分析は、平成29年度と同様に、記述についてはText Mining Studio 5.1(NTTデータ数理システム)で分析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 次年度使用額が生じてしまった理由は、主に以下の2点である。まず、平成29年度に予定していた国際学会への参加が所用により叶わなかった。また、分析ソフトの購入等については別の研究費でまかなうことができた。よって、平成29年度の支出額を予定額よりも抑えることができた。 (翌年度分に向けた使用計画) 平成30年度は、改めて国際学会(IEA:国際人間工学会.イタリア)へ参加し、研究成果を発表する予定である。また、文献(教材)を調査するにあたり、資料請求費に研究費を活用する予定である。他、実験画像の検討を開始するため、撮影および打ち合わせ等で交通費が発生する。撮影した画像データを編集・整理するためのパソコンおよびハードディスクを購入する予定である。
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