研究課題/領域番号 |
17K12094
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
笠原 康代 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (00610958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療安全 / 教育 / 看護師 / インシデント / リスク知覚 / ハザード知覚 |
研究実績の概要 |
2017年度に行った「対象者の成長・発達段階(年齢層)別のインシデントの傾向」に引き続き、「母性・産科領域」や「小児」、「外科病棟」「循環器病棟」といった診療科に焦点をあてた分析も実施した。以上のことから、対象者の成長・発達段階別および診療科別のインシデントの傾向をある程度は把握できたと考える。これらの知見は、安全教育の内容を検討する際の基礎的資料になりえる。しかし、これらは医療施設におけるインシデント報告をもとにした結果であり、在宅医療においては不明確である。医療が施設内だけではなく在宅に移行している流れを勘案すると、在宅医療も包含する形でインシデントの傾向を把握し、安全教育の内容に反映していく必要がある。そこで、2018年度は在宅医療が関係する事例についても検討した。 (方法) 日本医療機能評価機構で収集されている医療事故情報において「在宅」「医療機器」をキーワードとして検索し、抽出された事例の内容を分析した。 (結果・考察)検索の結果、75事象が抽出された。人工呼吸器に関するものが41件、酸素療法関連が25件、人工心肺が2件、輸液ポンプ関連が5件、腹膜透析が1件であった。 以下より、最多であった人工呼吸器に焦点をあてて述べる。機器の種類は、在宅からの持ち込み機器が32件、院内で使用している機器が9件であった。発生内容は、気道や呼吸回路の問題が33件(80.4%)、ベンチレーター/電源の問題が6件(14.6%)、アラームの問題が1件(2.4%)、MRIによる問題が1(2.4%)であった。気道/呼吸回路の問題の背後要因としては、知識不足や不慣れ等に起因した不適切なモード設定や回路の誤接続などが明らかになった。今後は、これらの結果をもとに臨床に即した教育シナリオを作成していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記したとおり、施設内においては対象者の成長・発達段階(年齢層)別および診療科別のインシデントの傾向をある程度は把握できた。また今回、在宅医療の関係する分析結果を追加できたことで、施設内に限らず在宅医療にも活用できる教育プログラムの製作に着手するための基礎的資料を作成できた。 ただし、在宅医療におけるインシデントやアクシデントは日本医療機能評価機構等で収集されている事象もごく僅かしかなく、未だ不明確な部分が多い。よって、在宅医療におけるインシデントの傾向については今後さらなる調査を要する。また、当初計画していた医療安全に関する教育内容の把握については、現在、文献検討を継続して行っており、結果を出すまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、前年度計画していた文献検討と在宅医療におけるインシデントの分析を進め、プログラムを構築するための基礎的資料を追加するとともに、教育シナリオを作成する。そして、教育プログラムへの実装を目指す。プログラムは現在までに開発が進められてきたものを活用する。 具体的な方法としては、過去2か年と今年度で得られた結果をもとに教育シナリオを作成し、プログラムに実装する。それを用いて、看護師と学生を対象にそれぞれ予備実験を行い、教育内容としての妥当性を評価する。それと同時に、看護師が危険ととらえる事象、回避法を収集、分析し、教育内容に反映しプログラムを改良していく。なお、予備実験は看護師および学生ともに各20名程度を予定している。 2020年度は、看護師および学生に試用し、教育効果を評価していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額で購入できる品がなかったため
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