研究課題/領域番号 |
17K12096
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
田中 幸子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20286371)
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研究分担者 |
川上 裕子 亀田医療大学, 看護学部, 講師 (20612196)
川原 由佳里 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (70308287)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オーラルヒストリー / 倫理 / 歴史 |
研究実績の概要 |
社会科学のオーラルヒストリー研究とは異なり、看護学のオーラルヒストリー研究では、プライバシーの保護、研究参加者への調査の許諾を慎重に行っていることが昨年の調査から明らかになっている。そうした倫理的配慮が看護特有のものなのか、課題が残った。看護の歴史の継承を促進するためには将来的にも通用するオーラルヒストリー研究のあり方を検討する必要がある。 そこで現在、医療全体のオーラルヒストリー研究の状況を把握するために過去10年に絞って日本医史学会誌の状況を調査した。現在調査結果をまとめているところである。 また、海外でのオーラルヒストリー研究の倫理的課題を明らかにするために、V.R.ヤウのオーラルヒストリーの理論と実践(2011)、Paul Thompson(2017)The VOICE OF THE PAST, Lynn Abrams(2016)ORAL HISTORY THEORYなどをもとに分析した。P.Thompsonは、労働者の歴史に関する書証が少ないことについて、文書の個人性、地域性、および非公式性が高まるについてその文書が残存する可能性が低くなると指摘している。それだけにオーラルヒストリー研究は社会の全体像を理解するために重要であり、その一方で語り手は情報をどのように使用されるかわからないため適切に説明を行うことが重要といえる。倫理には、価値観および知識の両方によって導かれた意思決定が伴うもので、時には研究者が有害なまでの自己検閲を行うことで、研究対象者(参加者)を保護する研究者が潜在的な問題を報告しないことによって、結果的に他者の損害につながることもあることがわかった。V.R.ヤウは、このようなジレンマに対し状況に応じて解決されなければならないとしており、国内の学会誌調査において、論文の内容の解釈を伴った分析を行っていく必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Covid-19により海外のオーラルヒストリーアーカイブスの調査が進められなかった。またオーラルヒストリーの手法を用いた看護労働調査ができなかった。看護労働調査は高齢者を対象にすることになるため遠隔での調査協力は難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年もCovid-19の状況は変わらないと予想されるため、学会誌調査をより丁寧に行うこと、WEBによる海外のオーラルヒストリーアーカイブの状況を、国別、施設別に丹念に調査していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が送れていること、海外への学会参加ができなかったことによって次年度使用額が生じた。2021年度は、文献・資料代、資料整理のための人件費、WEBによる学会参加費に使用する。
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