本研究の目的は、患者のプライバシー上のニーズに基づく電子カルテ画面の一部非表示化を実現するために、患者のニーズを把握できる具体的な方法を明らかにすることである。 患者が入院した際に、自身の個人情報に対する考えを相手に伝えられ、知られたくない情報の提供・共有範囲が決められるチェック機能を構築することは、情報プライバシーの観点からも有効であると考え、タブレットを使用し回答できる患者向けの模擬的なテンプレート画面の改良版を作成した。 このテンプレート画面を使用し、入院患者40名を対象にインタビュー調査を開始したところ、新型コロナウイルスによる研究活動への影響が生じ、13名の協力を得たところで中断に至った。このため、令和2年度は研究対象者の募集方法に雪だるま式標本法を追加するための変更審査を受け、15名の調査協力を得ることができた。 令和元年度に調査できた13名の結果を解析したところ、タッチパネル操作が困難な患者はおらず、プライバシー上の要望を表明した場合でも10分程度で回答し終えていた。知られたくない情報が「ある」を実際に選択した患者は2名存在した。12の個人情報を提示したところ、その内容や項目数は妥当であると回答した一方で、情報共有の範囲を治療・ケアにおいて直接接するかどうかで職種を選択することに対しては、接しない職種は問う必要がないとの意見があった。また、予定入院の患者は、外来で入院説明を受ける際に利用したいと回答し、緊急入院の患者は状態が落ち着いてから利用したいと回答した。以上より、患者の多くは自分には必要ないが、役立つと述べており、患者が情報プライバシーへの要望を医療者に伝える手段を準備できたと考える。研究成果は、第40回医療情報学連合大会(静岡県・浜松)で発表した。演題発表を通じて参加者から有用な意見を得ることができた。
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