研究課題/領域番号 |
17K12100
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
松浦 利江子 金城学院大学, 付置研究所, 准教授 (50535995)
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研究分担者 |
鈴木 英子 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 教授 (20299879)
松浦 明宏 中京大学, 国際教養学部, 教授 (60344636)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 患者看護師関係 / 陰性感情 / 自尊感情 / 道徳的感受性 |
研究実績の概要 |
本研究は、看護実践の過程において、患者に対して陰性感情をもつ看護師の経験に着目し、多角的に検討して関連要因を明らかにしたうえで、それをふまえた看護師支援策を構築することを目的としている。 平成29年度末から平成30年度始めに、15施設に勤務する看護師1500名を対象に実施した自記式質問調査(調査内容は、患者に対する陰性感情経験頻度および嫌悪度(松浦ら 2014))、改訂道徳的感受性質問紙(前田ら 2012))、自尊感情(Rosenberg 1965, 山本ら 1982)、基本的属性、職場環境因子)で得られたデータについて、患者に対する陰性感情経験嫌悪度の合計得点を従属変数とした重回帰分析を行った。その結果、自由度調整済み決定係数は0.24であった。病棟の異動を希望している(β=0.19、p<0.05)、職場で困った出来事に遭遇した時に酒や薬に頼る方法では対処しない(β=-0.18、p<0.05)、自尊感情が高くない(β=-0.40、p<0.01)、道徳的感受性が高い(β=0.27、p<0.01)、患者に対する受身的陰性感情経験頻度が高い(β=0.33、p<0.05)ことが、陰性感情経験嫌悪度と有意に関連していたことから、過度な嫌悪感を防ぐ支援、適切なストレス対処方法の獲得、自尊感情の維持も視野に入れて看護師支援策を検討する必要性が示唆された。 なお、15施設の環境等の違いが結果に影響を及ぼすことを加味し、より一般化可能な結果を得るために調査施設を絞りこみ、全数調査をする必要があると考えた。そこで3年目に1地域の中核的役割を担う400床以上の規模の2施設に対象を絞り、再度自記式質問紙調査を実施した。2施設のうち1施設についてはデータが得られ、分析も済んでいる。もう1施設は現在データ収集中である。今後は、2施設を合わせてデータを分析し、支援策の構築に向けて研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の計画は、1~2施設の中規模以上の医療機関に勤務する全ての看護師を対象に、改めて自記式質問紙調査を実施し、患者に対して陰性感情をもつ看護師の経験の関連要因、影響要因を改めて検討し、看護師支援策の構築をすることであった。調査対象を絞り込んで全数調査を実施することにより、より一般化可能な結果を得ることができると考えたからである。交渉の結果2施設から承諾を得、うち1施設では調査を完了し、結果の分析も済ませた。もう1施設は、諸般の事情により調査の実施が次の年度に延期されることとなったたため、本研究期間を当初の3年から1年延長して4年として調査の実施、分析、考察、そして看護師支援策の構築と進める予定としているため、進捗状況としては「遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
《調査1》として平成30年3月~4月に15の医療機関に勤務する看護師計1500名を対象に実施したデータから明らかになった、看護師の患者に対する陰性感情経験の関連要因、影響要因を基に、令和元年度には、中規模の医療機関2施設に対象を絞り、そこに勤務する全ての看護師を対象にした自記式質問紙調査の実施を計画し、うち1施設の調査を実施した。令和2年度にもう1施設の調査を実施し、その結果も加味して改めて看護師の患者に対する陰性感情経験の関連要因を検討する。そして、《調査2》として計画している、看護師を対象にしたインタビュー調査を実施し、臨床看護師がかかえている問題意識および対処方法、支援に関するニーズの具体的内容を明らかにし、臨床場面に即した看護師支援策の構築に向けて研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
《調査1》の再調査をもう1施設を対象にして実施するための費用(調査票の印刷、データ入力費用)、再調査の結果から明らかになった課題を踏まえた、聞き取り調査実施のための連絡費用、データ入力費用、研究分担者との調整会議、学会誌投稿のための費用として使用する予定である。
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