研究実績の概要 |
本研究では,研究者が取り組んできた北海道・関東地方の悉皆調査をもとに看護学実習環境としての学生の居場所・実習物品の「モデルタイプ」を基準として作成し,効果検証することを目的とした.デザイン学の視点から,連携協力者である専門家の意見を得て「モデルタイプ第1案」を作成した.2018年~2019年には看護系大学教員,看護師養成所教員,実習指導者の3つのグループインタビューを実施し,「モデルタイプ第2案」へと改良した.特に実習物品の一元管理に向けて実習物品専用バッグの材質や物品の内容,数などについて精練した. 上記取り組みから,“学生の居場所がある”,“実習物品の必要数を配置・整備する”,“学生用の電子カルテがある”からなる「看護学実習における物理的環境モデル」を作成した.学生の居場所は,「ナースステーションに近く,学生が安心して情報収集や思考作業をする場所をもち,ナースステーション内の一角にも小スペースとして居場所をもつ」というモデルタイプを得た.学生の実習物品に関して,2019・2020年度には,基礎看護学実習の1グループ6名配置を想定し,必要な実習物品(アネロイド血圧計2台,パルスオキシメーター2台,聴診器)をセット化した.また,利便性と感染管理の視点をふまえた材質の実習バッグをA大学の基礎看護学実習の各フィールドに設置して使用を試みた.2020年度に学生・実習指導者・教員にモデルタイプの効果検証を意図した質問紙調査を施行し,2021年度にデータ分析に取り組んだ.結果,学生の居場所は,83%が確保されていた.実習バッグが使いやすいと感じる理由は,学生が使い慣れている物品である,スタッフへの遠慮なく使えるなどの記載が得られた. 看護学実習環境の基準について指導者への認知を高めていく工夫の必要性が示唆された.研究成果を2022年度に学会へ演題登録し,論文化に向けて遂行中である.
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