研究課題/領域番号 |
17K12127
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
田中 真木 長野県看護大学, 看護学部, 助教 (00405127)
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研究分担者 |
秋山 剛 長野県看護大学, 看護学部, 講師 (20579817)
伊藤 祐紀子 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (50295911)
金子 さゆり 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (50463774)
多賀谷 昭 長野県看護大学, 看護学部, 名誉教授 (70117951)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 倫理的感受性 / 看護学生 / 看護倫理教育 / プログラム開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、アジアの基礎看護教育における倫理教育を体系化することを全体構想とし、看護学生が臨地実習で体験する倫理問題への対処行動の元となる倫理観から、日本における倫理的感受性育成プログラムの構築を目指すことを目的としている。研究質問は、1)臨地実習における看護学生の遭遇した倫理問題と、その対処行動についての特質は何か?2)日本及びアジア諸外国の看護学生の持つ倫理観とは何か?3)その倫理観に基づく倫理的感受性育成プログラムは、日本及びアジア諸外国における看護学生の倫理観育成にどの程度の効果があるか?、の3点にある。今年度は研究開始年度に当たり、この研究を進めてゆく上でのプランニングに焦点を当てて検討を行った。年度ごとその概略図とデータ収集期間の明確化、データ収集場所の開拓、また近年における研究課題についての文献検討を行った。また、諸外国のスーパーバイザーから以上の実績について意見をもらい、次年度の布石となるべく多数の見解をもらった。平成29年度2月に渡米し、Samuel Merritt UniversityのDiana Jennings教授ならびにUniversity of AlbertaのJude Spires准教授よりスーパーバイズを得た。既存の実績との本研究との関連性の明確化、ならびにデータ収集方法(Webでのアンケート調査方法の提案)、データ分析方法(Narrative approachよりも国際間比較ならEthnographyを選択することの提案)、タイ以外でもカナダ、アメリカでも国際間比較は行えること、それに伴う各国でデータを取る意味をさらに深めること、関連する文献リストを紹介された。また、Relational Ethicsで権威であるUniversity of AlbertaのWendy Austin名誉教授が新たにスーパーバイザーとして加わった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、国際間比較を研究の焦点としており、研究計画の精錬は必須である。今回、データ収集場所の開拓ならびに質問紙等のバックトランスレーション等、その国でのキーパーソンは誰か、IRBへの申請方法等、詳細に研究計画を詰める必要があったため、文献検討も含め、平成29年度はその調整に時間を掛けた。次年度より、実際に研究が進行するにあたり、また各国との詳細なやり取りの中で調整が必要な面も突発的に出現する可能性も否めず、引き続き、念密な調整を日本チーム、諸外国チームと行ってゆく。
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今後の研究の推進方策 |
臨地実習で遭遇した倫理問題への対処行動からみえる看護学生の倫理観を質的(第1段階)および量的(第2段階)手法によって検証し、第3段階では、検証された結果から倫理的感受性育成プログラムを作成し、その検証(内容の妥当性、国にとっての適切性)を行う。質的分析では、日本の看護学生の持つ倫理観の仮説的特質を抽出する。1)研究者の個人的チャンネルを通したsnow-ball-samplingを用い、看護系大学に在籍する基礎看護・専門(領域別)実習を終了した学生30名程度を対象とする。教員との二重役割のために学生に強制力が働かないよう細心の注意を払う。2)今までの実習経験から「何を行う事が正しいのか間違っているのか、人の行いで何が善い事で、何が悪い事なのか、と考えさせられる問題(倫理問題)」について、その時の詳しい状況、自分自身はその場面をどう捉え、どのような行動をとったのか、それはなぜかを半構成的面接法を用い、語ってもらう。先行研究の成果を受け、倫理問題への対処行動に至る背景への質問項目を増やし、より看護学生の内的要因が明確になるようインタビューガイドを工夫する。3)直接観察されない精神的内部構造を視点に持つ新行動主義心理学からの内面的な心理モデル「S(Stimulus:刺激)-O(Organism:有機体の内的要因)-R(Response:反応)理論」を概念枠組みとして用い、質的に分析し、そこから現れる倫理観の特質を抽出する。第2段階(量的分析):質問紙調査では、第1段階で得られた看護学生の持つ倫理観の特性について、国際比較を行い、量的視点からみた日本の特徴を明らかにし、質的・量的双方の結果に基づき、倫理的感受性育成プログラムを開発することを目的とする。第3段階は、倫理的感受性育成プログラムを実際に実施し、その効果を検討・評価してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、研究計画の精錬ならびに文献検討、データ収集場所の開拓等に焦点を充てた。本来、今年度よりデータ収集を始める予定だったため、当該年度と次年度以降の使用計画に差異が生じたと考えられる。次年度以降、質的データ収集に関わる諸費用(旅費、謝金)、量的データの国際比較を行うための海外旅費等が発生する。多国籍間比較の対象国が増えたことにより、データ収集の調整等で発生する諸経費も発生する予定である。
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