本研究は、ICTを活用した実習指導者の自己成長を促進するネットワークシステム構築のための基礎的研究である。A大学の実習を受け入れている施設で実習指導者の役割を担う看護職者107名を対象として、職務キャリア尺度(石井)とネットワークシステムのニーズに関する自記式質問紙調査を行った。解析は、IBM SPSS Statistics Ver26.0およびTextマイニング6.2にて実施し、実習指導者の職務キャリアと実習指導者間のネットワーク構築に向けたニーズを明らかにした。 その結果、看護師経験年数、実習指導者としての経験年数が長い実習指導者ほど職務キャリアが高かった。また、職務キャリア尺度の因子の平均点をみると、「質の高い看護の実践と追求」が最も高く、「自己能力の開発」が最も低かった。さらに、実習指導者同士の情報交換の場やネットワークの必要性が明らかとなった。結論1.看護専門職としての経験年数と実習指導の経験を有した実習指導者は、職務キャリアが高かった。これらの経験を意味づけすることによって、さらなる職務キャリアの向上が期待できる。結論2.実習指導者は、所属施設を越えた実習指導者同士の情報共有の場を臨んでおり、地域包括ケアシステムを捉えた指導方法の検討や指導者としての自己研鑽の場として期待している。結論3.実習指導者の職務キャリア尺度の因子では、「質の高い看護の実践と追求」「対人関係の形成と調整」に関する能力が高かった。しかしながら、「自己能力の開発」に関する項目が低い傾向にあったが、組織を越えたネットワークの構築により、「自己能力の開発」が促進され実習指導の新たな知見が得られる可能性が示唆された。
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