研究課題/領域番号 |
17K12143
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研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
小笠原 知枝 人間環境大学, 看護学研究科, 教授 (90152363)
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研究分担者 |
島内 節 人間環境大学, 看護学部, 教授 (70124401)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 終末期 / エンドオブライフケア / 高齢者 / 意思表示阻害要因 / 啓発教育プログラム / 市民教育 / QOL / QODD |
研究実績の概要 |
本研究は、先ずエンドオブライフケア(以下EOLC)の課題になっている終末期高齢患者の意思表示を阻害する要因と、意思表示が阻害された結果どのような事態が生じているかを明らかにし、その研究結果を反映した教育プログラムを考案して実施し、最後にその効果を検証することを目的としている。 具体的には、第1段階:終末期高齢者の意思表示の実態把握と意思表示阻害要因の明確化、第2段階:EOLC教育プログラムを開発とその効果を測定するための評価指標の作成、第3段階:EOLC教育介入計画の具体的検討、第4段階:数か所の施設で研修会開催の実施、第5段階:開発されたEOLC啓発教育プログラムの効果の検証と研究成果の報告、などの5段階を踏んでアプローチしている。 2019年度は上記第3段階と4段階に取り組んだ。しかしながら、研修会を企画した地域が台風の影響を受け、その開催中止を余儀なくされた。そのため、1か所の開催のみとなった。その後の計画も新型コロナ感染の影響により更なる追い打ちにさらされ、わずかに一か所の研修会であったが、研修会参加者からの評価は高かった。研修会後のエンドオブライフに関する知識得点は上がり、演習後のエンドオブライフケアに対する関心も高まった。今後は参加者を広く公募したうえで研修会開催の必要性が示唆された。 研究実績としては、終末期高齢患者の意思表示の実態の把握を目的に、看護師と介護士にインタビュー調査を実施したことによる研究成果を2019年9月に開催された第3回JEOLC学会において、「臨死期の在宅高齢者とその家族における訪問看護師の意思確認へのケア支援、「訪問看護における高齢者の在宅看取りに関する終末期ケアの特徴」を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記した本研究の目的を達成するために、計画した5段階のアプローチを進めている。先ず、2017年から2018年には、本研究テーマに関するシステマティック・レビューと所属機関の研究倫理審査書作成とその承認を得た後、在宅訪問看護師のインタビュー調査を実施した。その結果から得られた知見を2019年9月第3回JEOLC学会において、「臨死期の在宅高齢者とその家族における訪問看護師の意思確認へのケア支援(山本純子,小笠原知枝,加藤亜姫子)」と「訪問看護における高齢者の在宅看取りに関する終末期ケアの特徴(加藤亜姫子,山本純子,小笠原知枝)」の2題を発表した。 2019年には、第2段階と第3段階の高齢者市民を対象としたエンドオブライフケアに関する啓発教育プログラムの開発に取り組み、作成されたプログラムと評価指標を用いて、研修会を実施した。 研修会での高齢者一般市民を対象としたエンドオブライフケア啓発教育プログラムを講義と演習から構成し、その具体的な講義内容と演習の展開方法については共同研究者らと検討した。前述したように、台風という気象状況から時間短縮を余儀なくされたために、1)下記に関する知識・態度習得のための講義(1時間)、2)QOL・QODD態度育成のためのグループワーク(午後1時間)ともに短縮した。 具体的には、講義内容は①終末期高齢患者・家族の意思表示場面の実態とその阻害因子、②終末期における病の軌跡、③終末期医療の実態と病態的特徴、④EOLC:看取り、⑤Total Pain、⑥QOL & QODD、⑦事前指示書とリビングウィル、⑧予後告知とACP)と短縮した。またグループワークでは、(1)慢性閉塞性肺疾患の患者が急変し、人工呼吸器を装着するかどうか、(2)自宅療養中の高齢患者が経口摂取できなくなった時、患者の希望にどう対処するかの2事例を挙げて討議した。
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今後の研究の推進方策 |
研修会で実施した高齢者一般市民に対する教育の効果はかなり高いが対象者が43名で少なく、2019年から現在に至る期間は、もう少し対象者を拡大したいと考え活動している。しかしながら、新型コロナ感染症などの影響で、対象の拡大した上での研修会実施は困難な状況である。 今後は、高齢者市民のEOLCに対する認識と態度の変容を求め、65歳以上の一般市民を対象に、第1段階で示唆された終末期高齢患者のQOL・QODD促進因子や阻害因子及びシステマティック・レビューで示唆されたエビデンスを根拠に、さらに第2段階で開発された教育プログラムを用い、実際の状況に応じして修正を加えつつ研修会を実施したい(第4段階)。そして、第5段階の「開発されたEOLC教育プログラムの効果と教育介入プロセスの評価」に関しては、研修会の講義と演習による教育介入前後で比較し、その効果レベルを更に検証をする。 以上のプロセスで得られた研究成果をエンドオブライフケア学会や看護系学会などの関連学会で発表する予定であるが、学会開催の中止を余儀なくされた場合には、学会誌に投稿あるいは報告書を作成して関連施設に配布する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、先ずエンドオブライフケア(以下EOLC)の課題になっている終末期高齢患者の意思表示を阻害する要因と、意思表示が阻害された結果どのような事態が生じているかを明らかにし、その研究結果を反映した教育プログラムを考案して実施し、最後にその効果を検証することを目的としている。
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