研究課題/領域番号 |
17K12143
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研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
小笠原 知枝 兵庫大学, 看護学研究科, 教授 (90152363)
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研究分担者 |
島内 節 人間環境大学, 看護学部, 教授 (70124401) [辞退]
下舞 紀美代 関西看護医療大学, 看護学部, 教授 (80458116)
原田 美穂子 関西看護医療大学, 看護学部, 准教授 (40537784)
小林 由里 奈良学園大学, 保健医療学部, 准教授 (30826813)
橋本 容子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (90789695)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 終末期 / 高齢者 / 啓発教育 / エンドオブライフケア / QODD / QOL / 意思表示阻害要因 / 教育プログラムの開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、先ずエンドオブライフケア(以下EOLC)の課題になっている終末期高齢患者の意思表示を阻害する要因と、意思表示が阻害された結果どのような事態が生じているかを明らかにし、その研究結果を反映した教育プログラムを考案して実施し、最後にその効果を検証することを目的としている。 具体的には、第1段階:終末期高齢患者の意思表示の実態把握と意思表示阻害要因の明確化、第2段階:EOLC啓発教育プログラムを開発(プログラムの内容と教育介入プロセスの検討)、第3段階:EOLC啓発教育プログラムの効果を測定するために評価指標の作成、第4段階:開発されたEOLC啓発教育プログラムをもとに、EOLC教育介入を実施、第5段階:開発された啓発EOLC啓発教育プログラムの効果と教育介入プロセス評価などの5段階を踏んでアプローチしている。 令和2年度は、上記第4段階と5段階に取り組んだ。しかしながら、研修会を企画した地域が台風の被害を受け、その開催の中止を余儀なくされた。そのため、一か所のみの開催となった。その後の計画も新型コロナ感染症の影響により、わずかに2か所のみの研修会開催であったが、研修会参加者の評価は高かった。研修会後の知識得点は上がり、演習後のエンドオブライフケアに対する関心も高まった。今後は、参加者を広く公募することに加え、老人施設介護施設の介護職員などを対象とした研修会開催を検討している。 研究実績としては、終末期高齢者の意思表示の実態の把握を目的に、看護師と介護福祉士にインタビュー調査を実施したことによる研究成果を、2019年9月に開催された第3回日本エンドオブライフケア学会において、「臨死期の在宅高齢者とその家族における訪問看護師の意思確認への支援」、「臨死期の在宅高齢者の在宅看取りに関する終末期ケアの特徴」を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の本研究の目的を達成するために、計画した5段階のアプローチ(上記)を進めている。先ず、2017年から2018年には、本研究に関するシステマティック・レビューと所属機関の研究倫理審査申請書の作成とその承認を得た後、在宅訪問看護師のインタビュー調査を実施した。その結果から得られた知見を、2019年9月第3回JEOLC学会において、「臨死期の在宅高齢者とその家族における訪問看護師の意思確認への支援(山本純子,小笠原知枝,加藤亜妃子)」、「臨死期の在宅高齢者の在宅看取りに関する終末期ケアの特徴(加藤亜妃子,山本純子,小笠原知枝)」の2題を発表した。第4段階の啓発教育の実施は2019年8月に淡路島在住高齢者43名に、また2020年度8月には福井市14名と鯖江市在住16名の高齢者を対象に、「最後まで自分らしく生ききるために:もしもの時のために、今準備できることは」というタイトルで、講義とグループワークによる演習を実施した。 本年度は、前述したように、新型コロナ感染症による研究実施に関する具体策をとり、下記に関する知識と態度習得のための講義・演習の短縮と、オンライン方式で実施することに変更した。 具体的な講義内容について、インタビュー調査による前研究(終末期高齢患者の意思表示の実態把握と意思表示阻害要因の明確化)の結果と、筆者らの既存の研究:小笠原他(1999)、林他(2017,2019)、小川他(2018)などにより検討した。その結果、以下の10項目(①終末期高齢患者・家族の意思表示場面の実態とその阻害因子、②終末期における病の軌跡、③終末期医療の実態と病態的特徴、④EOLC:緩和ケア、看取り、ホスピスケア、グリーフケア、⑤Total Pain、⑥QOL & QODD、⑦事前指示書とリビングウィル、⑧予後告知とACP、⑨死の認識とコミュニケーション、⑩遺族悲嘆)を教育内容とした。
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今後の研究の推進方策 |
第3段階で作成された評価指標を用いた研修会前後の終末期やエンドオブライフケアに関する知識とエンドオブライフケアに対する態度の変化を比較したアンケート調査結果では、開発された啓発教育プログラムの効果はかなり高かった。しかし、研修会3回の受講者合計は73名と少なく、研究エビデンスとしては弱い。そのため、今後コロナ感染が収束されるならば、終末期高齢者の意思表示を支えるために、さまざまな研修会の機会をとらえ、引き続き一般市民の終末期やエンドオブライフケアに関する知識習得と態度変容のため、研修会を実施したいと考えている。 また高齢者福祉施設の高齢者や介護福祉士に対する啓発教育へと発展させたいと考えている。今年度はこれまでに得られれた成果をまとめ、示唆された知見を看護系学会誌に発表し、論文ととして投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染により研修会開催が困難になったため研究の進行が遅れ、研究成果の発表も困難になっている。そのため、以下の1・2・3を予定している。
1.研修会開催の打ち合わせや国内学会発表(岡山、山口、横浜など)などのための旅費、2インタビューやアンケート調査結果の入力のための補助者雇用費用、3.研修会配布資料や研究成果報告書冊子の作成に必要な物品などの購入、などを予定している。
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