研究課題/領域番号 |
17K12154
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
李 範爽 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (50455953)
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研究分担者 |
青木 恭太 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員教授 (00125808)
神田 清子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (40134291)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳活動量計測装置 / 携帯型活動量計 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究目標は脳活動量計測装置の疲労計測指標としての妥当性を検証し、携帯型活動量計の装着が看護業務へ及ぼす影響を検討することであった。その他、脳活動量計以外に疲労計測手法についても検討した。 はじめに、脳活動量計測装置の特性を検討した結果、疲労の計測には非利き手ではなく、利き手の結果を用いることが妥当であることが示唆された。生理指標開発において重要なことは性別や年齢など対象者の基本属性の影響を最小限にすることである。若年健常者22名と高齢者21名を対象に脳活動量計測装置から算出される非滑らかさ度合いを比較した結果、非利き手は年齢の影響を受けやすく、疲労計測には不向きであることが分かった。その一方、利き手は対象者の基本属性の影響が少なく、安定的な計測が可能であることが示唆された。また、分担研究者の青木恭太氏を中心に指標の改良についても検討した。現在のシステムでは視覚表示提示速度が1秒と固定されているため課題への慣れが生じる可能性がある。その提示速度を人間が認知できない範囲で変動させることでより感度の高い指標が開発できるかを、その技術的な側面を含めて検討した。 2つ目の携帯型活動量計の装着が看護業務へ及ぼす影響の検討では、最新機種であるActiwatch Spectrum Plusの本研究指標としての適性を検討した。、Actiwatch Spectrum Plusは前機種より大きく、正確さや清潔を要する看護業務中に装着することは負担が大きいとの結論に達した。予備実験や専門家アドバイスを踏まえ、今後の研究では全勤務時間帯ではなく、睡眠や仮眠中のみ装着することで対応することとなった。 3つ目の疲労計測に有用な手法については、注意機能の評価に広く使われているTrail Making Testが疲労計測にも有用であるかを検討しはじめた。現在、電子版を用いた予備実験に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は平成29年度に研究手法を確立、30年度に睡眠・仮眠の質に影響を及ぼす因子を特定、31年度に特性された因子への介入が仮眠の質向上に有用であるかを検討する3段階プロセスとなっている。 平成29年度研究では、脳活動量計測装置の疲労計測指標としての妥当性検証が終了、その他の実験条件が決定した。また、疲労計測に有用な他の指標開発にも着手した。新しく開発に着手したのは、電子版Trail Making Testである。このテストは注意の転導性と分配性を評価する手法として世界的に用いられる机上課題である。今回机上課題を電子化したことで、様々な神経心理学的側面、運動生理学的側面が同時に評価でき、結果をデーターベース化しやすくなる利点が得られた。脳活動量計測装置が疲労による全般的注意機能の変化の検出に有用であるのに比べ、電子版Trail Making Testは疲労が注意の転導性と分配性に及ぼす影響を検出しやいと考えられる。今後計測場面の特性に合わせて計測装置を選ぶことが可能になると期待する。 平成30年度の本研究に向けては、実験実施のための協力施設の確保、倫理審査の承認が得られている。平成30年度上半期中にデーター収集を終了し、下半期ではデーター解析と因子の特定まで研究が進められると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は夜勤が看護師の睡眠・仮眠の質に及ぼす影響とその関連因子を抽出し、睡眠・仮眠の質向上の具体的な方略を明らかにすることである。夜勤従事者の疲労、睡眠質低下の問題は看護師だけの問題ではなく、医療福祉・産業界における共通の問題である。本研究課題の成果により、疲労・睡眠質を評価する客観的手法が確立でき、夜勤に従事する多くの職種にも汎用的に利用可能になることも期待できる。 また、疲労・睡眠質には勤務量だけでなく、勤務者間の人間関係によるストレスも影響を及ぼすことが知られている。本研究課題は夜勤の業務量など勤務の量的側面に重点をおいているが、今後は勤務者間の人間関係などが生活全般に及ぼす影響など勤務の質的側面も評価していく必要があると考えられる。本研究課題が当初の計画以上に進展し、研究環境が整った場合は、人間関係によるストレスが疲労・睡眠の質に及ぼす影響についても本研究課題内で検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳活動量計測装置の開発用に計上していた予算の支出が予定より少額であった。差額は翌年度購入予定の身体活動量計の追加購入に用いる予定である。
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