本研究の目的は,病院情報システムを利用した医療ビッグデータを基に良質な看護を提供するための病棟マネジメントを支援するシステム基盤を構築して,病棟看護スタッフの業務量を可視化し,業務管理における有効活用度の向上に資する統計的方法を検討することである。 統計解析を主とした「業務量推計モデルの開発」と標準化作業を伴った「システム基盤の開発」を進めてきた。 「業務量推計モデルの開発」では、集積データから業務量に影響を及ぼす要因を見つけだすための探索的因子分析を行い,業務量の時間量としての観測変数と観測できないチーム力と患者状態について潜在変数を用いた共分散構造分析(SEM)を行った。因子間の相関係数パス係数とモデルの適合度指標を算出しながらSEMによる最適モデルを導出する作業を行った。5%水準で有意である推定値(標準化推定値)が得られ、適合度指標においても充分な適合を示した。「患者状態」や「チーム力」といった抽象的因子も計測可能な指標に着目することで、業務量の制御が可能になることが示唆された。 さらに抽象的因子の項目の関連性と潜在変数の妥当性を検討した。病棟業務のプロセスフローも並行して精査することで、業務量推量モデルにおける時間量としての観測変数や最適モデルの導出が可能となった。 「システム基盤の開発」では、看護システムから得られる業務量データと医療情報システムから,看護情報,患者状態情報,スタッフの臨床実践能力情報等のデータ抽出・連携するシステム設計を行った。また、医療情報インターフェースについては、看護業務行為マスタの項目を分類整理して、医療情報の標準化規格の項目に対応した。 これまでに行った業務量推量モデル開発から最適モデル式をプログラムに組み込んでシステム基盤を構築した。
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