研究課題/領域番号 |
17K12166
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
平尾 百合子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (50300421)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 院内感染予防 / 感染管理体制 / 職業感染予防 / 中小規模病院 / 過疎高齢化地域 |
研究実績の概要 |
平成29年度は感染対策の基本である手指衛生に着目し、効果的な手洗い方法の教育とパームスタンプ法による手指汚染の可視化が看護師の手洗い手技向上に与える影響について、同意が得られた過疎高齢化地域の中規模病院の看護師20名を対象に、同一対象前後比較の介入研究を実施した。「介入前」にはコロニー数の有意な減少を認めなかったが、「介入直後」「介入後1.5ヶ月」では有意に減少していた。コロニーの形状より環境菌と皮膚常在菌に大別し比較した結果、環境菌は「介入直後」「介入後1.5ヶ月」で有意な減少を示した。皮膚常在菌は「介入直後」で減少しなかったが、「介入後1.5ヶ月」では有意に減少したことより、効果的な手洗い方法は皮膚常在菌の湧出を抑えることが示唆された。 次に過疎高齢化地域の病院の手術室環境清浄化時における感染防止対策としてのPPE使用実態を明らかにするため、甲信地域の45病院の手術室管理者と手術室看護師を対象に質問紙調査を実施した。手術室管理者は44枚(回収率91.5%)、手術室看護師は389枚(回収率87.2%)有効回答350枚(有効回答率78.5%)あり、病院規模別の内訳は中小規模病院が65.9%を占めていた。看護師のPPE使用実態は、感染の危険性が高い場合でも手袋95.7%、マスク91.1%、エプロン50.9%、ゴーグル41.1%の使用率であった。PPE使用について、大規模病院では「感染の危険性」「組織の勧め」の行動意図得点が高く、中小規模病院では「感染の危険性」「組織の勧め」「設置場所」が有意に高かった(p<0.01)。その他、中規模病院2施設における二酸化塩素ガスの据え置き型放散製剤の空間除菌・消臭効果についても検討した。 現在、本研究の研究協力者が所属している過疎高齢化地域の中小規模病院で感染対策マニュアルを試験的に導入し、臨床での実用の可能性について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は過疎高齢化地域の研究機関に所属しているため、本研究対象となる中小規模病院からの研究協力が得やすい環境にあり、おおむね順調に進んでいる。また。大学院生や大学院修了生などの研究協力者らの協力も得られているため大きな問題はない。 当初の計画で調査を予定していた奈良県南部、東京都奥多摩、宮崎県内中山間、沖縄県北部に関する調査については、連携研究者や研究協力者らの所属部署異動など予定変更があり、調査場所や研究計画を調整中である。 今年度は研究成果について学会発表や論文投稿が遅れているが、次年度から積極的に発表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、感染症専門医や感染管理認定看護師が不在の中小規模病院でも効率よく院内感染対策が実施できるよう本研究の連携研究者や研究協力者がいる近隣地域の過疎高齢化地域の研究協力が得られた中小規模病院3施設で、医療者用と介護職員用の二種類の感染対策マニュアルの試案を導入している状況である。 この試験的導入に協力している3施設で考案した感染管理体制や感染防止対策マニュアルについて、臨床での実用の可能性をフォーカスグループインタビューや質問紙調査を行う予定である。 その他、費用対効果に関しては、新しい環境クロスが次々と普及されるようになった現在の状況にあった接触感染予防のための効果的な環境清拭法を検討する必要性が出てきている。フォーカスグループインタビュー(FGI)法により環境清拭の実態とマーケティング課題を把握した上で、一般細菌拭き取り検査により病床環境の汚染状況を確認し、環境清拭用クロスを用いた細菌学的実験を行い、費用対効果も含めた接触感染予防のための病床における効果的な環境清拭方法を検討することも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品等の購入においては定価で計算していたが、購入時に割引があったこと、また旅費についても都内までの交通費で回数券を使用し節約したため、9000円程度の残金が出てしまった。翌年度は今回の残金も含めて物品購入に充てたいと考えている。
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