本研究では、「コンピテンシーとは、看護中間管理職の職務または状況に対し、さまざまな状況を超えて、かなり長期間にわたり、一貫性をもって示される行動や思考の方法」と定義し、質的記述的研究方法を用いた。データ収集は、対象者にコンピテンシーの開発のための面接方法である行動結果面接法8)(Behavioral Event Interview、以下 BEIとする)を参考にしたインタビューガイドを用いて半構造化面接を行い、了解を得て録音したものを逐語録にしてデータを得た。BEIとは職務を効果的にこなす人材の特徴に着目し、その職務でぶつかった、きわめて重大な状況で各人が取った行動を、逐一、極めて詳細に説明してもらう方法である。面接者は、なぜそのような状況が生じたのか、だれがその状況に関わっていたのか、その状況に対応するにあたって、何を考え、感じ、何を達成したいと思っていたのかを聞き、対象者の行動特性について明らかにしていった。対象者は病床数が200床以上を有する3つの病院に管理者の経験がある看護部長・看護師長8名に対して面接調査を実施した。概念化から抽出された大項目は、【クライエント重視】【現場重視】【能力開発】【ポジションパワーの活用】【思考する】【ストレスマネジメント】【自己確信】【組織の理解】【自己学習】【看護職の社会的役割の理解】【他部門との協調】の11項目であった。患者・家族に対しては【クライアント重視】【現場重視】【ポジションパワーの活用】が、スタッフに対しては【現場重視】【能力開発】【ポジションパワーの活用】などが行われ、これらの実践のためのコンピテンシーとして、【思考】し、【自己学習】しながら自己の【ストレスマネジメント】を行っており、同時に【組織の理解】をしながら【他部門との協調】し、【看護職の社会的役割の理解】をふまえた実践を行っていた。
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