研究実績の概要 |
子育てを理由に離職する女性看護師が多い現状を危惧し、子育て時期に特有の要因と、離職に繋がりやすいとされる職業性ストレスの「バーンアウト」との因果関係をモデル化により明らかにし、子育て期間中のバーンアウト予防と就労継続支援に繋げることを目的とした。 神奈川県内の市立病院に勤務する看護師3,758名を対象に、バーンアウトを目的変数、個人要因、環境要因、子育てを困難に思う気持ち、緩衝要因を説明変数とする質問紙調査を実施した。女性看護師の有効回答2,047名を対象に共分散構造分析による因果モデルの検証と、子育て時期別(①子どものいない者、末子の年齢が②3歳未満の者、③3歳~就学前の者、④小学生の者、⑤中学生の者、⑥高校生以上の者)の多母集団の同時分析を行った。 バーンアウト因果モデルは、子育て時期別に3通り(A.子どものいない者、B.末子の年齢が中学生以下の者、C.末子の年齢が高校生以上の者)検証された。3つのモデルに共通して、個人要因の「イライラ感」「自身の健康問題」がバーンアウトの増強、緩衝要因の「職場への満足感」は低減に対する直接効果を認めたが、環境要因の「超過勤務時間の長さ」は、Bモデルにおいてのみ、増強への直接効果を示した。さらに、仮説の「子育てを困難に思う気持ち」は、いずれのモデルにおいてもバーンアウトへの直接効果は認められなかったが、Bモデルのうち、末子が小学生以下の者(②③④群)では、「イライラ感」の増強と「職場への満足感」の低下に対する直接効果を認めた。 超過勤務時間の長さは、子育て中の女性看護師のバーンアウト増強に影響を及ぼしており、その削減が望まれる。また、小学生以下の子どもを持つ者では、子育ての困難感が、イライラ感の増強や職場満足感の低下に影響し、結果としてバーンアウトに繋がる可能性がある。子育て時期のメンタルサポートの必要性が示唆された。
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