本研究では,急性期病院で認知症高齢者をケアする看護師の困難感を測定する尺度を開発し,この困難感がバーンアウトへ及ぼす影響を明らかにするために,全国の200床以上の国公立系医療機関で急性期病院のうち,14病院で認知症高齢者が入院している病棟で勤務する看護師2032名を対象とし,自記式質問紙調査による横断研究を実施した.1235名の有効回答者より,バーンアウト因果モデルを作成し,共分散構造分析にて適合度が検証され,パス係数は全て有意であった.急性期病院で認知症高齢者をケアする看護師の困難感のバーンアウト因果モデルでは,『認知症看護困難感』はバーンアウトに直接的に影響し,「陰性感情」を介して間接的にも影響していた.「感情コントロール」「アサーティブネス」「別の仕事に就きたい」「健康維持」,「職場満足」が『ネガティブな心身の状態』という潜在変数を示し,バーンアウトへ直接影響していた. 『WLB』は,『認知症看護困難感』または『ネガティブな心身の状態』を介して,バーンアウトへ間接的に影響していた.認知症看護の困難感は,バーンアウトに直接的に影響し,陰性感情を介して間接的にも影響していた. 急性期病院で認知症高齢者をケアする看護師の困難感を持っている者はバーンアウトしやすいことが明らかになった.認知症高齢者をケアする看護師がバーンアウトを予防するためには,認知症対応力向上の研修の工夫,教育研修など受講できる環境を整えること,職場内での多職種連携などが望まれ,急性期病院における認知症ケアの教育プログラムを構築する一助となったのではないかと考える.
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