研究課題/領域番号 |
17K12193
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研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
西上 あゆみ 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (30285324)
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研究分担者 |
山崎 達枝 東京医科大学, 医学部, 兼任准教授 (40576063)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 災害看護 / 病院防災 / 看護部 / 備え |
研究実績の概要 |
本研究の目的は自然災害に対する病院看護部の備えに対する具体的な方略を明らかにし、その方略をガイドライン化することで、BCP(事業継続計画)を念頭に置いた病院看護部の備えを継続実施できるシステムを開発することである。平成29年度は、病院看護部の防災担当者の災害に備える活動実態を明らかにすることとして調査を進めた。平成30年度は、自然災害に対する病院看護部の備えに関する具体的な方略が記された冊子(ガイドライン)の課題と有用性を明らかにすることを目的に研究を行った。 研究方法としては、質問紙調査とWeb調査の2種類で行うこととした。質問紙調査であるが、国内の災害拠点病院の看護部と平成29年度以降本冊子の作成にかかわった研究協力者を対象した。研究対象者に対し、調査の説明、前年度の結果を基に作成した冊子、質問紙を送付、郵送で返信してもらった。質問内容は、施設の背景と回答者の概要、冊子に関する課題、意見、有用性とした。 結果、平成30年11月より745施設へ送付、224施設(30.1%)から回答を得た。回答施設の背景では、被災の経験がある施設が57施設(25.4%)、傷病者の受け入れ経験のある施設85施設(37.9%)等であった。施設における災害への備えの満足度は、「満足」2施設(0.9%)、「だいたい満足」64施設(28.6%)であった。冊子の有用性について「参考になる」195施設(87.1%)であった。冊子への具体的な追加事項にも多くの追加意見が記述された。 平成31年3月には日本災害医学会で昨年度の研究成果を報告するとともに参加者に冊子に関する説明を行った。さらに平成30年9月、31年3月、精神科をもつ病院に対して防災対策の研修を行っている研究者と共同し、冊子を配布、意見交換を行った。現在、調査結果をもとに冊子の改訂を行っており、完成後は、Web調査へと進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査時期は計画より若干遅れたが、10月には研究者の所属機関において研究倫理委員会の承認を得た。その後、11月30日より調査を開始した。年度内に対象者の30.1%より回収を得て、調査内容の入力を済ませた。研究者間では同じ学会に参加するなど定期的な会議を持ち、研究をすすめた。平成30年度の計画を進めるために、前年度の研究成果について学会発表をするだけでなく、参加者に現在の取り組みを説明することで、さらに冊子の充実化を図ろうとした。同様の理由で、学内にいる精神科をもつ病院に対して防災対策の研修を行っている研究者と共同し、研修を企画、そこで冊子を配布、意見交換ができるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の全国の災害拠点病院を中心とした調査結果を、平成29年度の研究成果にくわえて、ガイドラインの精錬、改訂を行っていく。追加して、近年の文献についても精査し、さらにガイドラインに有用な方策について情報を追記する。昨年同様に災害対策に関する備蓄や用品などについて防災対策展が各地で実施されていることからこのようなところへ参加し、ガイドラインに関する情報を収集する。また、令和元年度の計画に対し、すでに関連学会へ本研究に関する交流集会企画の申し込みを行った。平成30年度の結果について学会などをとおして広め、利用者と意見交換を続ける。 令和元年度は当初の計画通り、具体的に災害に備える方略を表したガイドラインを作成する(4 月― 7 月)。ガイドラインは PDF 化してWeb より取り出せるように作成する。プリントアウトしたガイドラインを病院内看護部において防災・減災に対する検討資料として頂けるようにする。ガイドラインが公開された後は、過去2 年間の調査協力者に通知し、 Web を介して意見が頂けるようにする。意見をもとにWeb上のシステムの修正、改善を実施する。以上を通して、病院看護部の災害に対して備える活動実態、方略を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に計画していたことはほぼ予定通りに進行した。しかし、印刷業者の選定や見積もっていた国外の学会参加において予定経費よりも安く実施することができた。また、研究者間の会議開催に関しても、学会の委員会や学会参加後の会議に調整するなど、交通費・会議費等の予算の使用を抑えることに努めた。 令和元年度は、Webを用いた全国的なアンケート調査とするため、調査用紙の印刷、郵送費やデータ入力費用などの経費が、計画立案時よりも必要であることが見込まれる。また、世界看護科学学会をはじめ、日本の看護系学会でも交流会の企画や発表を予定しており、この参加のために次年度へ使用額を補填していく
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