本研究の目的は自然災害に対する病院看護部の備えに対する具体的な方略を明らかにし、その方略をガイドライン化することで、BCP(事業継続計画)を念頭に置いた病院看護部の備えを継続実施できるシステムを開発することである。 1年目の平成29年度は、病院看護部の防災担当者の災害に備える活動実態を明らかにすることとして調査を進めた。2年目の平成30年度は、自然災害に対する病院看護部の備えに関する具体的な方略が記された冊子(ガイドライン)の課題と有用性を明らかにすることを目的に研究、調査を行った。3年目の平成31(令和元)年度は、1年目の研究成果、2年目の全国の災害拠点病院を中心とした調査結果から、ガイドラインの精錬、改訂を行っていった。作成したガイドラインは、研究代表者のもつWebページで8月より公開した。4年目の令和2年度は研修会を開催し、本研究の推進を図ろうとしたが、コロナ禍において1度しか研修会は行えず、補足としてWebで実施された災害看護学会で交流集会を開催、看護管理者の集まる研修会でシステムの紹介などを行った。加えて、病院看護部が患者への教育を実施しているかについて着目し、調査をすることを考え、資料収集を実施した。その結果、約50件の患者教育資料をWEBから見つけることができた。 5年目の令和3年度、この結果をもとに病院看護部への調査を4月から実施した。1356施設に送付、364施設から返信があった(回収率26.8%)。備蓄、災害対策委員会設置、防災マニュアルの整備は90%以上と高かった。一方、ライフライン途絶時の対応がなく、患者に向けての防災対策は進んでいるとは言えず、備えの満足度もあまり高い結果でなかった。この調査を行うことで、病院看護部の備えを継続していくためには今後、患者向けの防災教育を視野に入れ、進めていくことが重要と考えられる。
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