研究課題/領域番号 |
17K12197
|
研究機関 | 神戸常盤大学 |
研究代表者 |
畑 吉節未 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (10530305)
|
研究分担者 |
畑 正夫 兵庫県立大学, 地域創造機構, 教授 (40596045)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 在宅療養者 / セルフケア / 学習プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は高まる大規模災害発生の危機に適切に対応し、在宅療養者が可能な限り持続的に在宅ケアを受けることができるように、在宅療養者の「セルフケア能力」の向上を図る学習プログラムの開発を行うことにある。 2年目にあたる平成30年度は、療養者・家族を対象としたの学習プログラム開発の準備段階として療養者や家族を医療・生活の両面からを支える身近な存在である訪問看護ステーションを対象にして、災害への備えの機能を高めるために展開する訓練の現状分析を行うとともに、先行研究(科研費(基盤(C)):研究課題/領域番号26463300)をもとに構築した「在宅における災害看護実践行動データベース」の充実を図り、これらをもとに実際的で効果的な教育プログラムの開発に着手した。 そのため、これまでに行った研究―日常からのリスクをベースにした災害の備えの枠組みの重要性、災害時の療養者の行動を促進・阻害する要因、療養者・家族のセルフケアやセルフケアサポート上の課題、支援者としての訪問看護ステーションが直面する課題、日常からのステークホルダーを巻き込んだ備えの構築上の課題、効果性の高い訓練を行うための支援者がとらえる安否確認などの意義、備えを実践する上での負担感など―を統合して、災害時を想定した備えのあり方を検討した。療養者・家族の学習プログラムは開発途上にあるが、現実適用性の高い学習プログラムを開発するために、調査研究にとどまらず災害の備えに関心の高い政令市保健所や財団法人が実施する研修への参画機会を通して関係者の学びの度合いなどに配意しながら、理論、実践両面からセルフケア能力の向上を図る学習プログラムに関する災害の備えの研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被災経験を持つ訪問看護ステーションの管理者がその経験を省察し、そうした経験を実際に災害への備えに活かしている現状を訪問看護師の語りをもとに分析を行った。また、他者の経験を療養者・家族のものに転換するための学習プログラムの在り方について検討を行った。 その成果をもとに、まず療養者・家族の身近な存在として日常から療養者・家族の医療・生活の両面から支援の中心を担う訪問看護ステーションを対象にした学習プログラムの開発に着手した。そのため、これまでの研究成果をもとにインストラクショナルデザイン手法を活用して、行動レベルでの備えを効果的に実現するための中核となる学習目標の設定に向けた検討を行った。 さらに、療養者の日常生活にあった学習プログラムの開発のために、既に収集した被災経験を持つ療養者・家族の語りをもとにセルフケアモデルを抽出するとともに、学習プログラムの開発を行う上で考慮すべき学習傾向の検討を行った。その上で、在宅での災害の備えに関心の高い政令市保健所や財団法人が実施する研修機会への参画を通して、関係者の学習傾向を把握するとともに、学習プログラムの中核部分への関心や学習の定着度などを確認し、学習プログラムづくりに生かした。 なお、こうした成果を在宅医療の専門家と共有し検討を深めるために、多角的な視点から分析を加え、日本在宅看護学会、日本難病看護学会、日本在宅医療学会、日本在宅ケア学会などで報告し貴重な意見を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
療養者、家族へのヒヤリングの結果からセルフケアの強化につながる学びの傾向を分析することに加えて、平時から療養者、家族のセルフケアをサポートする患者会や家族会などとの関係性を踏まえた有効な支援のあり方について調査・検討を行い、患者・家族を対象にした学習目標の設定や適切な学習方略の検討を行い、学習プログラム(試行版)の作成に生かす。 また、こうした検討結果を訪問看護ステーションの支援のための学習プログラムの作成・充実に活用するとともに、災害時に在宅療養者・家族への支援を定着させるための総合的な訓練のあり方についての検討を行う。併せて、療養者・家族、訪問看護ステーションの個別の備えの評価に加えて、療養者・家族とその医療、生活を支えるステークホルダーとの関係性のなかで、災害時のリスクを想定した備えの行動の構築を前提にした総合的な評価のための枠組みの検討を行う。 その上で、予定している研究や実践の成果をもとに、備えのハンドブックの作成に着手する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
〔理由〕今年度インタビュー予定であった出張予定の1回分を次年度に変更したため。 〔使用計画〕次年度、国内旅費の一部として充当予定である。
|