研究課題/領域番号 |
17K12200
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研究機関 | 宇部フロンティア大学 |
研究代表者 |
福森 絢子 宇部フロンティア大学, 人間健康学部, 講師 (30461354)
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研究分担者 |
岩永 誠 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40203393)
三島 瑞穂 宇部フロンティア大学, 人間社会学部, 准教授 (60613099)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 過剰適応 / 尺度開発 / 看護師 / バーンアウト / 離職予防 / 看護の質向上 / 職業アイデンティティ |
研究実績の概要 |
過剰適応は「異常な適応の仕方」と言われており、様々な心身の不健康を引き起こす。 看護師は過剰適応に陥りやすい職業特性を持ち、潜在的な過剰適応者が多くいると推察されるが、看護師を対象とした研究はみられず、過剰適応の形成要因も明らかになっていない。そこで、本研究では、 看護師における過剰適応の現状や過剰適応に伴う心理的問題について調査し、看護師を対象にした「過剰適応尺度」の開発、及び看護師の過剰適応に影響を及ぼす個人要因や環境要因を明らかにすることを目的とする。 看護師の過剰適応を調査することは、看護師という医療技術と心理的支援の両方が求められる特殊な職業に関して、過剰適応が看護師のバーンアウトの原因になり得るものであり、また予防の可能性があることについて学術的に新たな知見を得ることができる。また、看護師に特化した過剰適応尺度の開発により、看護師が自身の適応状態を把握しやすくなり、内的適応を高めるためのセルフケアをしやすくなり、バーンアウトなどの心身の不健康を予防することができる。また、看護師の過剰適応を促進している要因を明らかにすることで、過剰適応を予防するための介入を可能になるものと期待される。さらに、このことで看護師が外的適応に加え内的適応を高めることは、安定した職業アイデンティティの獲得につながるため、看護の質の向上にもつながると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成29年度においては、看護師を対象とした過剰適応尺度の開発するために過剰適応についてCiNii、Medical Online、Pub Med、医学中央雑誌などを用い文献検討を行い、過剰適応について定義づけを行い、概念枠組みを完成させた。さらに過剰適応尺度作成のための予備検討として、総合病院に勤務する師長主任を含む看護師15名に対して、約60分の半構造化面接を実施した。調査内容は、水澤の成人用過剰適応傾向尺度(2014)の4つの下位因子である「強迫性格」「評価懸念」「多大な評価希求」「援助要請への躊躇」に関することに加え「看護師としてのアイデンティティ」や「本来感」などについてである。現在、KJ法にて発言内容を意味内容に基づいてカテゴリーに分類し、データの分析を行っており、看護師の過剰適応尺度の尺度項目の抽出を行っているが、インタビューの整理に時間を要しており、尺度項目の作成には至っていない。 平成29年度の計画では、本年度中に尺度を用いた調査を行い、尺度の信頼性・妥当性の検討を行う予定であったが、尺度作成が遅れているため調査には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の秋頃を目途に過剰適応尺度を作成し、尺度の信頼性・妥当性の検討を行う。さらに看護師の過剰適応に影響を及ぼす要因の解明するための調査を実施する。調査対象は400床以上の総合病院に勤務する新人・中堅・ベテラン看護師を含む看護師300人である。調査内容は、個人要因として仕事の満足感尺度(岩永:1998)、仕事のストレス要因(NIOSH)、ストレス反応(岩永:2003)、対処行動尺度(岩永:2003)、見捨てられ不安尺度(斉藤:2012)、防衛的悲観主義尺度(DPQ)(荒木:2008)、日本的タイプA行動評定尺度(CTS)(瀬戸:1997)、職業アイデンティティ尺度(佐々木:2006)、自尊感情尺度(Rosenberg:1965)、自己効力感尺度(GSES)(坂野:1986)、評価懸念(山本:2001)、本来感尺度(伊藤:2005)などである。環境要因としては、職場環境、職場の人間関係、生育環境、婚姻関係、友人関係などを調査する。作成した看護師用過剰適応尺度を用いて測定し,個人特性や環境要因との関連を重回帰分析にて検討する。調査はWEBにて行い、要因ごとに複数回に分けて2年間で調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
過剰適応尺度作成後に尺度の信頼性・妥当性の検討のための調査と、看護師の過剰適応に影響を及ぼす要因を解明するためにWEB調査を実施する。その費用として各70万円(計140万円)の経費がかかるものと試算している。その他、学会発表用の旅費と研究打ち合わせ費用、研究成果投稿料、別刷印刷代として40万円かかると試算している。
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