研究課題/領域番号 |
17K12207
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
溝部 佳代 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (70322857)
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研究分担者 |
横澤 宏一 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (20416978)
尾崎 倫孝 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (80256510)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 周術期看護 / 局所麻酔 / 手術室 / 音環境 / 白内障手術 / 刺激音 / 生体計測 / 実験研究 |
研究実績の概要 |
第1段階の「意識下手術中の音環境の特徴および快・不快な聴覚刺激を明らかにする臨床研究」では、1)手術中の観察および環境計測、2)患者インタビュー(特に音環境に関して印象に残った点と気分・不安との関連など)、3)患者の手術を担当した手術室看護師インタビュー(特に音環境に関する状況・ケアと評価、いつも留意していることなど)に関してデータ収集を終えていたため、それぞれ分析し、結果に考察を加えた。 1)および2)の研究成果では、対象とした白内障手術の時間経過を①手術開始前、②水晶体切開時、③超音波装置操作時の3時点にわけて分析したところ、騒音レベルは②に比べて①③が有意に高く、また、患者の音に対する認識は、突発的な音に不快感情を表していた。一方、先行研究で指摘されている手術器具・機械音、医療者の会話に対して不快感情を抱く人はいなかった。以上より、医療者が騒音の発生を予測しやすい③の時間帯に加えて、①の手術準備を行う時間帯では、患者が不快に感じた突発的な音が生じやすい状況にあるといえ、騒音に対する不快感情を減らすための工夫が必要であると考えられた。 これらの研究成果は、予定通り国際学会(日本、大阪、2020年2月)にて発表した。また、得られた成果から、第2段階の実験研究として、健常者20名を対象とする「快、不快な聴覚刺激に伴う生体のストレス応答の特徴を捉えるための実験研究」にむけて、仮説設定の明確化および4種類の実験用音響刺激セットを開発した。 現在、実験研究のデータ収集を行っているところであり、1か月以内にデータ収集を終え、その後、解析を行う予定である。また前述2)3)の研究の成果では、患者および看護師の認識がより詳細に明確となり、看護実践への示唆が得られたため、今後、看護系学会で報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度内に第2段階の実験研究を終える予定であったが、生体計測機器の不具合が発生し修理を要したため、データ収集の開始が1か月遅れた。その後、プレテストおよび被験者リクルートを経て第1回目の実験日を迎えたが、実験中、新たに重大な計測機器本体の故障が発生したため、実験スケジュールを一度、白紙に戻さざるを得なくなった。 機器に精通した技術補助員と対応を練り、当該機器が使用できる見通しが立たないことから、同研究機関内の別施設に有するもう1台の生体機器で行うことを即断し、プレテストおよび被験者リクルートを再度行いもう1か月の期間を要したが、実験を開始することはできた。 以上より、やや遅れてはいるが、現在、半数のデータ収集を終えており、1か月以内にデータ収集が完了できる見込みである。期間を1年間延長し、引き続き研究成果をまとめ、最終年度とする。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、手術中の音環境を模倣し、不快刺激として実験用音響刺激セットを開発することを考えていた。しかし、第1段階の研究成果からは、手術中の音環境の中に不快刺激のみならず、快刺激となる音環境が存在していることが考えられた。そのため、4種の実験用音響刺激セットに快・不快両方の刺激音を組み込んで実施することとした。 以上より、当初計画にある介入研究(不快刺激に対する音楽BGMによる介入)は実施しないこととしたが、第2段階の研究計画の目的・方法に関しては、おおむね変更はない。 引き続きデータ収集を続け、その後、解析を行い、得られた成果は国内外の学会において発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費およびその他については、実験研究が年度内に完了しなかったため、技術補助員および施設利用に伴う諸費用が今後も発生することから、引き続き、次年度において繰り越し使用する予定である。 旅費については、新型コロナウイルス感染拡大防止の関係で、いくつかの出張・学会参加が取りやめとなり、次年度使用額が生じた。次年度において成果発表を行い、使用する予定である。
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