本研究目的は,炎症性腸疾患患者が主体的行動(食物の選択・調理方法・食事摂取状況等)と,客観的状態(自覚症状・血液生化学検査値等)のバランスを維持・改善し,長期寛解維持ための外来通院患者の主体的行動,客観的状態と看護職者ならびに医療者の関わりを調査し,炎症性腸疾患患者が長期継続しやすい主体的な食生活構築のための看護の展開について示唆することである。 調査プロトコール終了患者は炎症性腸疾患患者(潰瘍性大腸炎・クローン病)30名(平均年齢47.2歳,平均罹患期間13.3年)であった。自覚症状は少なく,栄養素・食品群別摂取量は基準値より高値であり,栄養状態の指標である血清Alb,炎症の指標である血清CRともに基準値内だった。医療者の関わりでは,食事指導を17名が受けており,職種では栄養士が多く,指導内容では「低残渣食を摂る」「油分の多い食事をひかえる」「唐辛子(香辛料)をひかえる」等が多かった。食事指導経験で食生活に対する意識の「食事摂取状況が良い」を比較したところ,経験あり群が有意に高値であり,また「食事摂取状況が良い」「三食バランス良い食事を摂る」と排便回数に負相関(p<0.05)があった。 血液検査データ・自覚症状から対象者は寛解を維持することができており,食事摂取状況も良好だったが,食事指導を受けた経験が現在の食事摂取状況の認識(評価)に影響を与えていることが明らかになった。また,実施者は栄養士が多く指導内容は従来型の画一的なものが多かった。患者の食事摂取状況の認識(評価)は食行動の要因・結果と強く関連するため,患者個々の身体状態に適ったテーラーメイドな食生活指導に向け,看護者・医師・栄養士間での情報共有や活用を視野に入れた協働の重要性が示唆された。
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