本研究では、飲水量に伴う腸内細菌叢の変化や体水分量を解析し、腸内細菌叢と体水分量との関連を明らかにすることを目的とした。 RomeⅢによる機能性便秘の診断基準を元に便秘有症者と判定された対象者のうち、研究への協力が得られた20代から40代の健常人4名のデータを解析した。対象者の腸内細菌叢の調査と体水分量の測定は、通常の飲水量の時と必要水分量を摂取するよう心掛けた時に行った。 通常時における1日の飲水量は必要水分量の64.7%であり、必要水分量を摂取するよう心掛けた時の1日の飲水量は必要水分量の102.9%であった。体水分量は、多周波数整体電気インピーダンス法を用い、糞便サンプル提出時に測定した。その結果、外液比(細胞外液量/体水分量)は、通常の飲水量の時が30.5%、必要水分量を摂取するよう心掛けた時が27.7%であった。必要水分量を摂取すると外液比は減少傾向にあったが、統計上有意差はなかった。 糞便サンプルは、調査期間内の排便があった際に回収し、対象者あたり2あるいは4検体を解析した。ブリストルスケールによる便性状と糞便中の水分量は、必要水分量の摂取に関わらず類似していた。 腸内細菌叢において、通常の飲水量の時と必要水分量を摂取するよう心掛けた時で比較すると、Actinobacteria門が12.4%と22.1%、Bacteroidetes門が11.2%と13.6%、Cyanobacteria門は0%と0%、Firmicutes門は74.7%と60.9%、Proteobacteria門が0.7%と1.5%、Tenericutes門は0%と0% 、Verrucomicrobia門が0%と0.1%であった。Actinobacteria門(p=0.0425)とVerrucomicrobia門(p=0.0431)の割合は、必要水分量を摂取することにより有意に増加した。 便秘有症者において、必要水分量を摂取することは善玉菌であるBifidobacterium属等を増加させ、腸内細菌叢のバランスや体水分量に影響を与える可能性がある。
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