研究課題/領域番号 |
17K12222
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
森 菊子 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (70326312)
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研究分担者 |
李 錦純 兵庫県立大学, 看護学部, 准教授 (60584191)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / セルフマネジメント / 増悪 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、慢性閉塞性肺疾患(以後COPD)患者の増悪予防のためのセルフマネジメント促進プログラムを開発することである。セルフマネジメント促進プロラムを作成するにあたり、訪問看護師による増悪予防支援がCOPD患者のセルフマネジメント能力にどのような変化をもたらすかについて、半構成的面接法により明らかにした。研究協力者は8名の訪問看護師で、訪問看護の平均経験年数は14年だった。 訪問看護師が、酸素療法について「くせになってはいけない。頼ってはいけない」という思いを持っている利用者に、低酸素になることの身体への影響を伝えることで、抵抗なく酸素を使用するようになっていった。また、酸素飽和度、脈拍を測定しながら一緒に歩き、測定値の意味を伝えていくことで、体調により数値が違うことを理解していった。このように、訪問看護師はその人の治療や療養法に対する考えを理解した上で根拠に基づいた説明をしたり、身体の状態を一緒に確認していきながら、必要な知識を提供することで、増悪予防に必要な身体の理解が深まった。 訪問看護師が、利用者が痰を見ているときに、「どんな色ですか」と尋ねたり、体重や食事量について尋ねることで、利用者は「痰の色は関係あるのか」「痩せることとCOPDは関係あるのか」「食べなくても栄養がとれる方法はないのか」と質問したり、相談してきた。訪問看護師が利用者の身体の状態に関心を示すことで、自分の身体について質問したり、身体の状態を維持するための方法について相談できるようになった。 訪問看護師が、「お風呂に入るときしんどくないですか」と生活での困難さを聞いたり、肩が凝っていますねと体に触れて、緊張している身体をねぎらうことで、自分のことを理解してくれている存在として、利用者と訪問看護師との関係性が深まったことが、セルフマネジメント能力の向上に繋がっていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、COPD患者の増悪予防のためのセルフマネジメント促進プログラムの作成、およびプログラム実施のための介入マニュアル、患者教育用教材の作成を目標としていた。しかし、訪問看護師の実践事例についてのインタビュー協力者を得るのに時間がかかり、プログラム作成までできなかった。予定していた訪問看護ステーションにおいて、COPDの利用者が現在はいないということにより、インタビュー協力者がなかなか得られなかったことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
訪問看護師による増悪予防支援が、COPD患者のセルフマネジメント能力にどのような変化をもたらすかを明らかにするために実施したインタビュー結果の分析を終了し、セルフマネジメントの能力の構成要素、看護師のケアの要素を明らかにする。これらの結果を踏まえて、増悪予防のためのセルフマネジメント促進プログラムを作成する。また、プログラム実施のための介入マニュアル、患者教育用教材を作成し、プログラムを用いた介入を開始する。プログラムの実施については、インタビューを実施した訪問看護ステーションの協力が得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COPD患者の増悪予防のためのプログラム作成にあたっての、訪問看護師へのインタビューが予定より遅れたためにプログラム作成ができなかった。よって、プログラム実施に必要となるパンフレット、日誌が作成できず次年度使用額が生じた。平成30年度はプログラムを作成し、介入を実施するためのパンフレット(イラスト作成・校正・印刷)および日誌の印刷を行う。また、インタビュー結果発表のための旅費、データ収集のための旅費、謝礼、データ整理のための謝金、データ入力のための費用として助成金を使用する。
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