研究課題
最終年度の研究として前年度までの研究成果を踏まえ、かつポリヴェーガル理論に立脚してクリティカルケアナースが実施可能な精神的ケアを考案し、その効果を検証することを目的とした。対象は高度治療室(HCU)の看護師で、HCU入室中の患者に対し実験ケアをで介入し、患者が退室後に患者自身に精神的な健康について自記式質問紙(K6)で評価した。看護師には、研修前と1年後に共感的援助について共感援助尺度(ESB-16)と多次元共感性尺度(MES)で評価した。研究は1群プレテスト・ポストテスト準実験的デザインとし、関東の一般病院のHCUに所属する看護師(N=16)であった。看護師には介入前に実験ケアの意味と具体的なスキルについて研修を行った。調査期間は、コロナ感染症で3度の中断があったが、2021年12月~2023年3月であった。実験ケアは、看護師が患者の不安、緊張、意識混濁、苦痛、何か言いたそうな様子、無表情、不穏な様子を観察したときに実施された。そのスキルは、視線を合わせる、名前で呼びかける、落ち着いた声、処置前の説明を行う、そっと身体に触れるであり、スキルの組み合わせや実施回数は患者の状況に合わせ、看護師の判断に委ねた。結果は、患者(介入前後 N=9と57)のK6の合計得点には有意差は見られず、いずれも精神疾患のカットオフポイントを下回った。看護師が観察した症状は不安、緊張、苦痛、何か言いたそうな様子が多く、意識混濁や不穏は少なかった。共感援助の変化は、ESB-16 の構成概念の「共感」と「こころの接近」において有意に介入後が高かった。患者の精神の健康では、実験ケアの影響について確認されなかったが、看護師の共感的なかかわりが高まったことから、患者との互恵性が実験ケアをきっかけに構築され、自律神経系の調整要素の繋がりの反応として患者に「安全・安心感」をもたらした可能性が示唆された。
すべて 2023
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日本看護科学学会誌
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