研究課題/領域番号 |
17K12234
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小板橋 喜久代 群馬大学, その他部局等, 名誉教授 (80100600)
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研究分担者 |
柳 奈津子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 講師 (00292615)
深井 喜代子 東京慈恵会医科大学, 保健学研究科, 教授 (70104809)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / 線維筋痛症 / 漸進的筋弛緩法 / 気功法 / 痛みのコントロール |
研究実績の概要 |
前年度までに収集した慢性疼痛を有する線維筋痛症(FM)の患者9名のデータの解析を行った。介入は、リラクセーションの体験教室である。漸進的筋弛緩法と気功法(八段錦)と合わせて心身のリラックスを促す方法として計画したが、気功法については、この動作を実施できる者と痛みのために実施できない者とがいたために、気功法の実施は任意として、評価の対象から除外した。 評価指標は、メインアウトカムとして①痛みの強さの知覚の評価(VASスケール)②痛みと思考や感情の評価(Pain Catastrophizing Scale=PCS)③疼痛による生活障がいの評価(Pain Disability Assessment Scale=PDAS)、手段的アウトカムとして①リラックス反応②リラクセーションによる生理的反応の評価(血圧・脈拍)③体験の語りである。 体験教室は、週1回、6か月間に24回開催した。体験教室では、その場で指導者と共にリラクセーション(漸進的筋弛緩法(以下PMR)および気功法)を体験するとともに、その時の反応を自己チェックした。それ以外の日は自宅での自己練習を勧め、リラックス反応と意見などを記録するよう促した。メインアウトカムの①痛みの強さの知覚の評価(VASスケール)は、ほとんど変化なく、むしろ少し強くなったものが1名いた。②PCSは改善し、痛みの知覚と感情が緩和されたと思われた。③PDASに変化はなかった。手段的アウトカムとして①リラックス反応は全員が上昇してリラックス感を体験していた。②血圧・脈拍は安定してリラックス反応を裏付けていた。③リラックスした時の心地よさが語られた。FM患者の多くが、普段から筋肉の過緊張を感じており、その緊張を抜けないという苦痛を担っており、PMRによって、その緊張が取れたときの気持ちよさが語られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象とした繊維筋痛症による慢性疼痛の患者の協力が得られ、予定したデータの採取は済んでいる。結果を分析・考察と論文として公表する作業が残された。 その結果、研究期間の延長申請をすることになった。ここで取り上げた繊維筋痛症によって生じる慢性疼痛に対する研究報告、中でもリラクセーションの指導の効果を報告した論文は見当たらないことから、本研究の成果を専門誌に公表し、ケアの方法として、広く知ってもらうことは重要と考える。 しかし、令和元年度において、研究者の体調不良から、関東地方での追加のデータの採取が困難となった。また、研究成果の発表のためのデータの整理と論文化の作業が滞ったことで公表に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度中に、データを分析し結果を論文化して公表する予定である。また関連学会に発表して、慢性疼痛へのリラクセーション法の活用の効果、有効性を得られる可能性について周知することを目指す。 現在までのところ、線維筋痛症の疾患そのものが、社会一般医も、医療職の間でもほとんど知られていない状況にあることから、この疾患による痛みと生活障がいの状況を、医療職者、中でも看護に携わる人びとに、知ってもらう必要がある。さらに、この疾患による慢性的な痛みに対して、リラクセーション法の実際の活用が有効であることを理解してもらうことは重要なことである。 この研究に協力していただいたFM患者は、それぞれ痛みを抱えながら、仕事も調節しながら、リラクセーションの体験と、それに伴うデータ測定のために、複数回にわたり調査会場に出向き、参加してもらった。線維筋痛症による全身の痛みを抱えて生活している患者本人にとっての理解者が増えるとともに、看護ケアとしてリラクセーションが活用されることは、ケアの受け手にとっても、ケア提供者にとっても意義深いことである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の体調不良により、収集したデータの分析・考察して論文作成に至らなかったことによる。また、データの処理にかかる経費などが、一部未使用として残ってしまった。これについては2020年度中に、分析を進めて専門誌に公表する予定で進めている。 次年度予算は、データの分析、論文化にかかる経費、および学会発表および専門誌への投稿にかかわる経費として、使用する予定である。
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