研究課題/領域番号 |
17K12250
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中尾 富士子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (40363113)
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研究分担者 |
鈴木 志津枝 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (00149709) [辞退]
小濱 京子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (40749082)
田代 浩徳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (70304996)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 続発性リンパ浮腫 / リンパドレナージ / セルフケア / 免疫能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん治療に伴うリンパ浮腫の発症予防のためのリンパドレナージの効果を明らかにすることである。本年度は、事前調査として、健康な人へリンパドレナージを行うことによる身体面の変化や効果を明らかにすることを行った。 健康な人へのリンパドレナージの実施とは、対象者1名に対し、30分の臥床の場合と30分のリンパドレナージの2回の介入を行った。なお、対象者は立ち仕事の時間が長い看護師とし、日勤8時間就労後に介入を行った。 その結果、臥床だけでも下肢の周囲径は減少したが、リンパドレナージを実施した方が浮腫は改善しやすいことが確認できた。特に臥床だけでは、鼠径部と膝関節など関節部分の周囲径は大きくなるか、浮腫がある状況で不変であったが、リンパドレナージを実施した場合の関節部分の浮腫は軽減していた。 結果から、健康な人であっても就労などにより浮腫が起こることから、その軽減対策として臥床だけでなく、関節部分のドレナージを加えて行うことが効果的であることを明らかにした。特に、立ち仕事が多い職業の方々は、就労後の浮腫により疼痛や疲労感を訴えることが多いことから、リンパドレナージを行うことにより、迅速な症状緩和が可能となあることが示唆された。立ち仕事の方々にとって、下肢の症状緩和の方法を明らかにすることは、就労時の症状を予防するだけでなく、仕事を継続できるという生活支援の方法になるという考えから、本研究の実施は労働者への就労支援としても貢献できると考えている。 今後は、リンパドレナージの安全性も確認できたことから、がん治療後のリンパ浮腫の発症予防への効果を明らかにすると同時に、上述したように「がんサバイバー」の方々の就労支援へつながるような研究を継続することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、当初、がん治療に伴う続発性リンパ浮腫の発症リスクがある患者を対象としてリンパドレナージの効果を明らかにすることを目的としていた。 だが、既存研究の精査と臨床上の実際を考慮した結果、リンパドレナージの実施による影響と安全性の確認を行うことによりより精度の高いドレナージの方法を提案できると考え、まずは健康な人の就労後のむくみを対象としてリンパドレナージを実施することとなった。評価方法としては、リンパドレナージだけでなく、対照群として臥床の場合を追加し、その両者の変化を観察し、同時に身体面の安全性を確認することとしたことから、当初の計画より進度が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の計画については、健康な人の就労後の浮腫に対するリンパドレナージの効果と安全性が確認できたことから、対象者をがん治療後のリンパ浮腫発症リスクがある方に対して活性酸素・フリーラジカルを測定し、浮腫自体だけでなく、浮腫の発症へ大きく影響する感染予防など免疫能を測定することを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は、がん治療後の続発性リンパ浮腫発症予防のためのリンパドレナージの効果を明らかにすることである。リンパドレナージの効果とは、体内の水分量・筋肉量・脂肪量などインピーダンスを測定することに加え、活性酸素・フリーラジカルの測定による免疫能の機能を客観的に可視化することである。そのためには、活性酸素・フリーラジカル測定機器を購入することが必要であった。 だが、既存研究や臨床現場の実際から、本調査の前にリンパドレナージ自体の効果と安全性の確認のための事前調査を追加した。この調査では、病的浮腫がない状態の人を対象としたことから、免疫能の指標である活性酸素やフリーラジカルの測定の必要性はなかったことから機器購入を見送った。 次年度以降は、当初の研究目的に則り、がん治療後のリンパ浮腫発症予防のための効果測定として活性酸素・フリーラジカルの測定機器を購入し、当初の目的達成へ向けた研究を実施する。リンパ浮腫発症リスクは「感染など皮膚や全身の炎症」により危険性が高まることから、研究者の仮説である「リンパドレナージはリンパ管系の機能を促進させ、体内の感染リスクを下げる」ことを検証する。そのため、当該機器は生体指標の評価として必要である。その他、研究の実施と結果の公表のための旅費や、研究者の会議のための通信費、専門家からの助言に対する謝金などの経費を繰り越し使用することを希望する。
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