研究課題/領域番号 |
17K12276
|
研究機関 | 関西看護医療大学 |
研究代表者 |
下舞 紀美代 関西看護医療大学, 看護学部, 教授 (80458116)
|
研究分担者 |
加藤 和生 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (00281759)
古川 秀敏 関西看護医療大学, 看護学部, 准教授 (10316177)
BECKER CARL.B 京都大学, 政策のための科学ユニット, 研究員 (60243078)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 終末期 / がん患者 / 心理 / 緩和ケア |
研究実績の概要 |
文献レビューより①緩和ケア評価に必要な項目の生成を行った。次に②文献レビューで生成された項目と,既存の評価スケールを比較し新規性がある項目の生成ができたかを確認した。【平成30年4月~7月】①は,関連ある国外文献数81件,国内文献11件より以下に示す項目があった。身体的苦痛(疾患の進行に伴う身体症状,呼吸困難,疼痛など),社会的苦痛(役割の喪失や経済的負担,他者との関係性の変化,望まない死に場所,療養施設のケアの質等),心理的苦痛(不安,恐怖,悔い,自己の死に対する意味づけ,受け入れざるを得ない死に対する葛藤,うつ症状,死への対処など),スピリチュアル的苦痛(宗教,孤独,価値,信念,尊厳など)であった。 【平成30年8月~12月】②は,終末期の心理過程の心理分析尺度として1)Templer (1970 ) Death Anxiety Scale:DAS ,2)Wong(1997) Death Attitude Profile-revised:DAP-R ,3)Dobratz(1990) The Life Closure Scale :LCS,4)Reference; Hammersla, J. F., & Frease-McMahan, L. (1990). Goals in Life Scale5)Washburn (2005) Regret Scale 6)Rosenberg(1965) Rosenberg's Self-Esteem Scale,7)Allport & Ross(1967) Religious Orientation Scale,8)丹下(1999)死に体する恐怖の尺度,9)藤本(2003)死に対処するための能力尺度より確認した。31年1月~3月】は論文化,および「終末期がん患者の身体的・心理的苦痛の内容とその時期」について発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の予定は,終末期心理評価尺度(仮名)』を作成することであった。尺度項目生成は,文献レビューおよび既存の心理尺度よりを緩和ケアの評価視点で抽出した。しかし,心理学的側面,死生学的側面,宗教学的側面より再考するに至っていない。その点が進捗としてはやや遅れているところである。項目の妥当性検証は,対象が終末期であるため,分析可能な件数が得られないことも予測し,直接面接調査を行うことを考えている。そのため,訪問看護ステーションおよび病院で倫理審査を受け承認された。終末期患者の同意が得られれば質問紙調査を開始する予定である。現時点で,患者個人から研究の同意を得られていない。研究進捗の遅れの原因として考えられるのは,①項目生成の最終確認協議の遅れ,②終末期患者で研究同意が得られにくい,③緩和ケアの質を問うため敬遠する施設があることが考えられる。そこで,対応策として,①を6月初旬に終了し,2018年現在8423の緩和ケア認可施設に質問紙調査を依頼を行う。返信を持って同意とする。②を解決するために,さらなる調査施設を探す。③は,緩和ケアの質の向上のために評価の必要性と今後の見通しについて詳細な説明を行うこととする。調査施設は特定できないようデータ加工するが,希望があれば調査の結果を開示することとする。研究成果としては調査施設全体として公表する。終末期患者の心理は,がん患者の場合,急速に症状が悪化する可能性がある。緩和ケア施設に入居直後とケア開始後1週間程度で調査を依頼する。やや遅れているが本年度前期内に調査することで遅れを解消できると考える。また,死の不安に対する研究では,(2018年 NANDA-I Editor’s Award)International Journal of Nursing Knowledge」の評価を得た。本研究で得られた結果も緩和ケアの参考としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,緩和ケアの評価尺度の妥当性検証調査と分析を8月までに終了する。その結果より,緩和ケアに必要な看護介入と成果について提案する。緩和ケア評価の妥当性検証,項目生成に関する文献レビューを論文化し公開する。死の概念モデルの検証を行う。具体的には以下の通り行う。1.尺度の信頼性,妥当性の検討,質問紙調査を行う。 2)対象:緩和ケア病棟に入院中で質問紙に回答可能な健康状態の患者300名程度3)データ収集方法:(1)国内の緩和ケア病棟有する施設(8423の施設長,看護部長へ文書をもって研究協力の内諾を得る。(2)施設長,看護部長の内諾が得られたら研究目的,研究の主旨について説明に伺う。(3)当該等施設の倫理審査を受ける。(4)倫理審査で承認が得られたら,施設長,看護部長に研究協力の同意を得る。(5)協力が得られる施設の研究対象者となる患者に質問紙を配信し,返信用封筒にて回収する。(6)研究対象者からの返信をもって,研究協力の同意を得たものと判断する。 4)分析方法:質問項目の質問票を作成し,理論的モデルと患者から得られた回答データが合致しているかを以下の方法を用いて検証する(1)尺度の項目と全体相関の検討を行う。(2)信頼性の検討全体および因子分析によって抽出された下位尺度ごとに内的整合性を検討する。さらに,確証的因子分析を行い,因子構造とデータとの一致性について検討する。(3)妥当性の検討尺度の妥当性の検討には,構成概念妥当性を検討するため,主因子法,プロマックス回転を用いた因子分析を用いて終末期心理尺度の構造が概念モデルと同様となるかを検討する。理論的モデルと回答データの合致については,共分散構造分析を用いる。共分散構造分析は観測データの背後にある,様々な要因の関係を分析する統計手法である(豊田,2007)。患者の回答データと理論的モデルの一致をみる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究、3年次計画であり最終年度の予算として繰り越し金が発生している。本費用は、調査研究および発表のための費用である。
|