研究課題/領域番号 |
17K12276
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研究機関 | 関西看護医療大学 |
研究代表者 |
下舞 紀美代 関西看護医療大学, 看護学部, 教授 (80458116)
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研究分担者 |
加藤 和生 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (00281759)
古川 秀敏 関西看護医療大学, 看護学部, 准教授 (10316177)
BECKER CARL.B 京都大学, 政策のための科学ユニット, 研究員 (60243078)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 終末期 / 心理過程 / がん患者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である「終末期患者の心理評価尺度」を開発し、緩和ケアにおける心理的評価を行うことである。そこで、2020年度は、①終末期がん患者の診療録の内容の再分析をし、「終末期のがん患者の死までの16日間の心理過程に関する探索的な研究」という研究テーマで論文化し採択(査読付き)された。しかし、本論文のデータは亡くなられた方の診療録から患者の訴えおよび看護師の観察内容、医師の治療上の指示を抜粋し分析したものであるため、実際は語られていても記録に残っていない事象が漏れており可能性がある。また、患者が発した言葉の意味を再確認することができないという課題が残った。そこで、直接終末期患者から心理的変化について面接調査を行うため、がん患者会、訪問看護ステーション、在宅ホスピスなどに調査依頼した。患者紹介が可能であるか各施設の代表者に研究協力の依頼説明を行った。コロナ禍で困難かと思われたが、協力施設及び患者紹介が可能との返事をいただいた。2021年度4月よ倫理審査申請、承認後患者説明と予定が立った。その際、「終末期」および死までの過程「死の受容」に関する用語について文献レビューを行った。日本看護研究学会学術大会にて「がん患者の『終末期』という時期に関する文献検討」「がん患者の『死の受容』の定義に関する文献検討」をテーマに発表予定である。 また、がん経験者の質の高い生活を支援するために、苦悩の実態を、金子(1999)の患者苦悩尺度を用い質問紙調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、新型コロナウイルス感染に伴い、調査が非常に困難であった。そのため、対面調査を避けた。また、可能な限り今までの調査データの再分析と論文化を行った。また、新型コロナウイルス感染症の収束の際、研究が実施できるように、研究計画を立案した。その結果、終末期患者の心理過程を論文化がかなった。尚、用語に関する文献レビューを行い、今後実施する研究に向けて、実現可能となるよう準備を行った。 その際「「終末期患者の心理評価尺度」を開発し、緩和ケアにおける心理的評価を行う」緩和ケアを受ける患者に対して、評価する視点としての尺度項目の生成は実現可能であるが、実際に質問紙調査による信頼性妥当性の検証は、倫理的に困難ではないかと考えた。そこで、どのような心理状態であるのかをまず明らかにし、その心理状態の変化が評価できる項目として考えうこととした。つまり尺度開発という視点ではなく、がん患者の終末期の心理を評価するという視点は変わらないが、日々の臨床での患者との会話から評価できる評価基準案を作成することに変更した。これまでは、尺度開発のための終末期の患者を対象とした信頼性妥当性を重視していた。しかし、尺度開発というより患者の心理が変化(苦痛の緩和)かを確認する項目を生成する、その項目を患者との対話で確認し苦悩があれば、対応できるようより実践レベルの視点で本研究を進めた。そのことから、順調な進展を見たと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年4月関西看護医療大学の倫理審査委員会で「がん患者の心理過程を明らかにするための面接調査」の承認を得た。2021年4月下旬より5月中旬までに15施設に研究の目的、方法、倫理的配慮に関する説明を行った。尚、2施設において倫理審査を受け承認された。実際の面接調査は、1名行った。他候補者として3名の患者紹介を得ている。今後同意をいただき次第面接調査を遂行する。おおむね8月末日には30名の終末期がん患者に告知を受けてから現在(死に近い時期)までの面接調査が終了する予定である。面接したデータは、随時分析に入る。9月末日までに最終分析を終了させる予定である。10月以降は、成果発表と論文化に向けて取り組む。面接は、①コロナウイルスワクチン接種が終了(患者、医療者、面接者してからの対面面接案②オンライン面接③電話面接の3つの方法で進めていくが、いずれも患者の及び関連施設の指示に従うことを大前提に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う、医療施設へのipat貸し出しのための購入をしていないこと、学会の延期や中止に伴く海外渡航旅費の未使用があった。本年度は海外論文投稿、学会参加などで交通費の使用が見込まれる。尚、医療施設へのipat貸し出のための購入も本年内消費となる。さらに、データ逐語録依頼など人権謝金も見込まれる。
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